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アフター・トランプ、恐るべき噓の「長い半減期」

将来にわたって民主主義を蝕む深刻な問題に

三浦俊章 朝日新聞編集委員

バイデン支持者はホワイトハウス近くで勝利を祝った=2020年11月8日、ランハム裕子撮影拡大バイデン支持者はホワイトハウス近くで勝利を祝った=2020年11月8日、ランハム裕子撮影

 アメリカではようやく新政権への移行準備が本格的に動き出した。「投開票に組織的な不正があった」とするトランプ大統領陣営の訴えは各地の裁判所で次々に却下され、法廷闘争の行き詰まりは明らかだ。これで来年1月の民主党バイデン政権の発足は確実になったと言える。

 だが、「私が勝った」とトランプ大統領が言い張って選挙の敗北を認めない状況が続く限り、同氏の熱烈な支持者の間には、新大統領が合法的に選出されたことを認めない「陰謀理論」が今後もくすぶり続けるだろう。

 それは長い将来にわたって、アメリカの民主主義や社会秩序の核を蝕む深刻な問題になるに違いない。

共和党支持者の過半数がトランプ当選を信じている

 二大政党の間でひんぱんに政権交代が行われるアメリカでは、スムーズな政権移行を進めることが政治的に必須とされてきた。

 長年の慣例では、11月初旬の大統領選挙の開票結果で主要メディアが当選確実を報道すると、ただちにその候補は“President elect”(次期大統領)と呼ばれ、12月の大統領選挙人の確定を待たずに、連邦政府の予算やサポートで、政権移行の準備を進めることが認められる。現職の大統領が受ける国家機密を含む安全保障問題のブリーフィングも、受けることができる。それは超大国アメリカのリーダーシップには断絶があってはならないからだ。だが今回、投開票で「インチキがあった」と糾弾し、「私が勝者だ」と宣言したトランプ大統領は、この移行業務を始めることを妨害し続けた。

「私は勝った」と言い続けるトランプ大統領=2020年11月5日、ホワイトハウスで、ランハム裕子撮影拡大「私は勝った」と言い続けるトランプ大統領=2020年11月5日、ホワイトハウスで、ランハム裕子撮影

 それが一転したのは11月23日。移行業務を支援する政府の一般調達局(GSA)のエミリ-・マーフィー長官が、バイデン氏あてに書簡を送り、政権移行に必要な資金を提供し、協力することを伝えた。大統領が政権移行作業を止めていることについては、共和党内部やビジネス界からも批判が高まっており、トランプ氏もその圧力に屈した形だ。だが、同時に大統領はツイッターで「私たちは戦い続ける」とも宣言、敗北自体は認めないつもりだ。

 トランプ大統領が来年1月20日の就任式のタイミングで、ホワイトハウスを引き渡し、政権を去ることに同意しても、なおも「選挙はインチキで私が勝者だ」と言い続けたらどうなるだろうか。

 恐ろしいのは、現時点でも、共和党支持者のうちかなりの割合が、トランプ大統領の勝利宣言を妄信していることだ。世論調査により、数字に幅があるが、だいたい5割から高いものは8割の共和党支持者が、「選挙の真の勝者はトランプ大統領だ」といまだに考えている。国民の4割が共和党だと考えると、全有権者の2割から3割が、バイデン氏の大統領当選を認めないことになる。これは何を意味するのか。

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筆者

三浦俊章

三浦俊章(みうら・としあき) 朝日新聞編集委員

朝日新聞ワシントン特派員、テレビ朝日系列「報道ステーション」コメンテーター、日曜版GLOBE編集長などを経て、2014年から現職。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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