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石破茂はどこで間違えたのか~自民党総裁選「惨敗総括」(上)

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

なぜ菅氏に戦いを挑んだのか?

石破 それは、自由民主党というものはかくあるべきだ、ということを誰も言わないような政党であってはならないからです。自民党は野に下った時に新綱領を作りました。

 《自民党は勇気をもって真実を語る党である。自民党はあらゆる組織と協議する党である。自民党は国会を公正に運営して政府を謙虚に機能させる党である。自民党は政策を作るにあたってはすべての人に公平な党である》

 これらのことを野党の時に決め、そしてそれを掲げて政権に復帰したはずだ。こんな大事なことを忘れていませんか。それを誰も言わない、そんな自民党であってはいけない、ということです。後世、「あの時、誰も何も言わなかったのか」と言われるようなことではいけないと思ったからです。

 政策について言えば、最大の問題は人口減少です。これを放置すればこの国はサステナビリテイを完全に失う。これを解決するための地方創生というのは、単なる地域振興策ではない。国の形を根本から変えるということであって、それが今一番必要なことだと私は思っているのです。

 現下の新型コロナウイルス対策についても、特別措置法は改正しなければならないでしょう。いろんな僥倖に恵まれて、感染者数、重症者数はある程度抑えられているけれども、それはいつまでも続かない。

 変えるべきところは変えていかなければならないということです。日本版CDCも作らなければなりません。そうでないと、科学的知見と社会政策をバランスさせることができないと考えるからです。

 外交面においても、日米地位協定は改定しなければいかんとか、沖縄の問題は本当に沖縄ときちんと正面から向き合っていかない限りは解決しないとか、問題はたくさんあります。総論でも各論でも、こうあるべきだということを今きちんと言わない、という選択肢は自分にはなかったということです。

 そして、こういうことは誰でも言えるわけじゃない。推薦人が20人いてくれなければそもそも言える立場にも立てない。少なくとも言える立場を与えていただいた自分に、言わないという選択肢はない、と思ったのです。

 ――おっしゃることは非常に立派なことだと思います。

拡大自民党総裁選の所見発表演説会に臨む菅義偉官房長官(左)と石破茂元幹事長=2020年9月8日、東京・永田町の自民党本部

 「菅・二階」VS「安倍・麻生」という暗闘の構図は明確な政治目的を達成するための積極的な理由から生じたものではなく、互いに抱える不祥事や疑惑の発覚を抑えるための消極的な背景から出てきたものだった。その背景などについて、私は8月29日の論座『「安倍・麻生」vs「二階・菅」 国家権力を私物化する総裁選の行方』で詳しく報告し、途中で出てきた「総・総分離論」についても報じた。暗闘の過程で菅や麻生の名前に加えて河野太郎や野田聖子らの名前も一時浮かんできた。やがてそれらは泡沫のように消えてゆき、9月を迎えて自民党内は菅の名前に一本化されていった。

――先ほど私が言った総裁選の前の基本的な暗闘の構図、「菅・二階」VS「安倍・麻生」という構図があって、その暗闘の結果、すでに自民党内の大勢は菅一本化に固まっていました。それを前にしてもなお言うべき正論は言わなければならないという石破さんの決意は、言ってみれば火中の栗を拾ったということだと思います。

 しかし、そのことを言うだけではなく、まさにその正義を実現するためには、やはり菅一本化となったこの構図そのものを打ち破るものがないとなりません。そこのところで、この暗闘の構図を事前に知っていた段階で、これに勝つためにはどうしたらいいかという策は練らなかったのですか。

石破 それは、思いつかなかったということでしょうね。菅さんに一本化されたから、われわれも菅候補で行くのか。でも、それは勝つことにはならない。

――それは、勝つことではまったくありませんね。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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