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菅総理と検察が安倍氏に迫る「政界引退」

「安倍前首相秘書ら聴取」の舞台裏と今後の行方を読み解く

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

菅首相は何を考えているのか

 振り返ると7年8か月の第2次安倍政権の間、日本の政治状況は「安倍一強」体制と言われ続けてきた。その体制が崩れ、体制を支えてきた官房長官の菅氏が後継首相となってほぼ2か月後にこのニュースが流れた。しかも、ニュースの流れ方が尋常ではない。官邸が検察の動きを止めるどころか自らささやくことまでやっている。

 読売新聞とNHKのニュースが流れた朝、自民党内にこのような見方が広がり、官邸や検察の思惑をめぐって様々な憶測が飛び交った。情報が混乱する中で、議員たちの最大関心事は次の2点に絞られた。

 まず、検察はどこまで捜査を進めるつもりなのか、という点。

 そして、二つ目に菅官邸がニュースを流した狙いはどこにあるのか。さらに端的に言えば、菅首相は何を考えているのか、という点である。

 二つ目の点から先に考えてみよう。最初に思い描いていただきたいのは、菅義偉氏が首相になった経緯、暗闘の構造である。

 私は日本人ジャーナリストとして初めて、安倍前首相が辞任表明する1週間前の8月21日の論座(『ポスト安倍は「麻生」か「菅」か/安倍vs二階の攻防激化~安倍内閣総辞職の可能性強まる。「佐藤栄作」越えの24日以降か』)で内閣総辞職の予測ニュースを報じ、その後同29日の論座(『「安倍・麻生」vs「二階・菅」 国家権力を私物化する総裁選の行方』)と併せて、「菅・二階」VS「安倍・麻生」という暗闘の構造をレポートした。

 つまり、安倍後継を決めるにあたって、当時の菅官房長官を立てる二階俊博自民党幹事長と、麻生太郎財務相を後継としたい安倍首相との暗闘の構造のことである。

 この構造を思い描いた時、誰しもが疑問に思う点がひとつだけある。内閣官房長官は首相のパートナーとして内閣を支え続けてきた「縁の下の力持ち」。首相とは誰にも増して同志的なつながりを持っているはずなのに、なぜ対立構造の中に位置することになってしまったのか、ということだ。

 同じような疑問は官房長官時代の菅首相の頭にも去来したにちがいない。菅氏にとってみれば、安倍内閣や安倍個人の醜い不祥事、疑惑をかばい続け、毎日午前、午後の記者会見でも弾除けの役を担ってきた。

拡大辞任会見に臨む安倍晋三首相(手前)。左端は菅義偉官房長官=2020年8月28日、首相官邸

 しかし、それにもかかわらず、後継首相を考える際に安倍氏が推したのはまず岸田文雄自民党政調会長、そして菅氏とは折り合いの悪い麻生氏だった。あくまで菅氏自身は外され続けた。

 この疑問の果てに「菅・二階」VS「安倍・麻生」という暗闘の構造が出来上がった。そして、この構造の特徴は8月29日の論座レポートでも詳述したが、4者のうち誰一人として安閑としていられる人間は存在しないという点である。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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