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菅政権の「逃げの政治」はどこまで続くか~短期政権の時代に入るかの岐路

責任回避が目立つコロナへの対応。「安倍一強」の強力な政治主導はもはや過去のもの

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

 11月26日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するには「この3週間が極めて重要な時期だ」と強調した菅義偉首相は、「ぶら下がり」取材で当面の対策を説明した後、記者から浴びせられた質問を振り切って、そそくさと官邸内に入っていった。「会見から逃げる」菅首相ーー。メディアは次々とそう報じた。

 かつて長期政権(1964~72年)を担った佐藤栄作首相は、言葉数は少なく、時機が熟するまでじっくりとタイミングを見計らう手法を得意としたことから、「待ちの政治」と称された。これにならえば、政権発足から2ヶ月時点での菅首相の手法は、「逃げの政治」と言うべきだろう。

拡大首相官邸に入る菅義偉首相=2020年12月1日午前8時17分、恵原弘太郎撮影

任命拒否問題、新型コロナ対策……「逃げ」が目立つ政権

 日本学術会議の6人の委員の任命拒否問題が最初の「逃げ」である。なぜこの6人なのか、理由を説明せよと詰め寄られた首相は、「総合的、俯瞰的」「前例踏襲をしない」「委員構成が偏っている」などと答えたが、いずれもすぐに論理破綻が明らかになった。

 挙げ句の果てに、テレビで「説明できることと、できないことってあるんじゃないでしょうか」と答えて、あとは押し黙ったままである。

 前政権の決定を継承したがゆえの混乱、「逃げ」であれば、政権発足後間もないため、仕方がないと言えなくもない。だが問題は、こうした半歩出ては逃げを繰り返すという対応が、政権が判断するべき新型コロナ対策でも如実に表れている点にある。

 菅政権は、異例なことに首相秘書官を厚労省出身からも起用し、閣僚人事でも厚労相経験者の加藤勝信氏を官房長官に、厚労行政を知悉(ちしつ)していると評判の田村憲久氏を厚労相に指名、さらに新型コロナウイルス感染症対策分科会委員の岡部信彦氏を内閣官房参与とするなど、新型コロナ対策に万全の布陣で臨んだように見えた。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の“大波”が見えてきた11月下旬、ウイルス対策の分科会と厚労省のアドバイザリーボードが再三にわたり、感染爆発を防ぐために対策を講じるよう提言しても、政権は「Go Toトラベル」の継続にこだわり、営業制限の要請の判断も遅れ、東京発着の「Go Toトラベル」についても東京都知事に判断を丸投げするなど、責任回避的な振る舞いが目につく。専門家、厚労省の専門的知見が、タイミングよく政治的決断に生かされた形跡はない。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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