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コロナ禍で激変! ヒンドゥー教徒最大の祭り「ディパバリ」~マレーシア

神々への祈りも「ニューノーマル」スタイルに

海野麻実 記者、映像ディレクター

祭りの前から”お祭り騒ぎ”だったが……

 まず、大前提として頭に入れておきたいのは、ディパバリは祭り当日だけの話ではない、ということだ。数日前の準備段階から、すでに大騒ぎの様相を呈するのが例年の風景だ。

 ヒンドゥー教徒は、延べ5日間に渡って続くディパバリの祭典を最大限に着飾って祝うため、初日用、2日目用、そして最終日用と、それぞれの日で異なる色やデザインの煌(きら)びやかなインドの伝統衣装サリーなどを、家族がみな何着も新調する。

 それだけでも一大イベントのようだが、女性はこれに加えて、ずしりと金色に輝くおおぶりの指輪やゴージャスなイヤリングなどを、時間をかけてじっくり吟味。さらに、親族や友人らを招いた「オープンハウス」(自宅でのパーティー)のためのご馳走をつくるため、玉ねぎやナス、オクラ、ダル豆に大量のスパイスなど、インド風カレーに必要な具材、またインド伝統の非常に甘いお菓子に欠かせない生乳の澄ましバター「ギー」や豆粉を大量に購入。“インド版新年の爆買い”さながらの光景が繰り広げられるのが、例年の風景だ。

子供たちを自宅において買い物

 そのため、マレー系イスラム教徒らの間では、「ディパバリが近付いてきたら、リトル・インディア(インド人街)には近づくなかれ」と、まことしやかに囁かれる。永遠に動かない気すらしてくる大渋滞と、鳴り止まない爆竹の爆音は、祭りの時期の悪名高い名物なのだ。

 ところが、今年はその大騒ぎが何処かへとすっかり消え去ってしまった。

 ディパバリ前日になっても、首都クアラルンプールのリトル・インディアでの人影はひっそりとまばら。いつもの年なら、屋外テントが張り巡らされ、マリーゴールドの花を束ねた飾り物がずらりと並び、インドの菓子や揚げ物を売る行商らでごった返すのに、今年はそれらがほぼ姿を消し、普段からそこで商いをするオーナーらが、控えめにディパバリで売れる人気商品を販売しているのみだ。

 クアラルンプール近郊から車で買い物に訪れていたヒンドゥー教徒の若い夫婦も、「一家で2人までしか買い物に出てはいけないという政府のお達しがあるので、子供達はみんな自宅においてきました。例年だと家族総出で連日買い出しを楽しむのがディパバリなのですが、今年は仕方ないですね。子供達が待っているので早く帰らなければ……。ここに長時間滞在すると感染が心配です」と、せわしない様子で足早に去った。

大きく変わった祭りの風景

 ディパバリ当日の朝は、家族揃って伝統衣装を纏い、寺院にお祈りに行くのがヒンドゥー教徒の習わしだ。それも、コロナ禍で大きく変わってしまった。

 クアラルンプール中心部の有名なヒンドゥー教寺院に向かうと、朝からひっきりなしに色鮮やかな衣装をまとった家族連れなどが訪れていた昨年までの風景はなく、人影もまばら。なんでも、コロナを恐れて外出を控えるヒンドゥー教信者たちのために、早朝6時過ぎからFacebookライブで寺院のお祈りの生中継。多くの信者が「ステイホーム」で自宅から静かに祈るようになったそうだ。

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筆者

海野麻実

海野麻実(うみの・まみ) 記者、映像ディレクター

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやForbes、共同通信47Newsなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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