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学校給食の無償化が“あたり前”である、これだけの理由

完全無償化に向けた「次の一歩」に

山内康一 前衆議院議員

義務教育は“無償があたり前”

 公立小中学校の授業料が無償なのはあたり前です。義務教育だから当然だと皆さんはお考えだと思います(私もそうです)。義務教育の授業料が有償だったらとんでもないことになります。

 児童生徒一人当たりの学校教育費を見てみると、小学校で93万8,537円、中学校で112万5,820円の税金が投入されています。もし小中学校が有償だったら、子どもが2人いる家庭は可処分所得のかなりの割合を授業料にあてることになるでしょう。

 母子家庭の平均年収は約290万円といわれているので、母子家庭ではとても子どもを有償の学校には通わせられません。低所得の家庭はもちろんのこと、中間層も授業料負担で困窮化することでしょう。就学率100%は実現不可能になるかもしれません。「小中学校が無償ではない」という状況は、今では想像もできません。

 また、小中学校の教科書が無償なのは今ではあたり前です。義務教育だから当然だと思います。しかし、小中学校の教科書が全面的に無償になったのは昭和38年のことです。それ以前は教科書を購入しなくてはならず、低所得層には重い負担でした。しかし、全国の保護者や市民の声を踏まえ、政府が教科書の無償化に踏み切りました。

 次に「義務教育だから無償であたり前」になるのは学校給食であるべきです。文部科学省は、学校給食法において義務教育段階における「学校給食の普及充実及び学校における食育の推進」を行うとしており、給食の実施を呼びかけています。国の方針として学校給食を無償化する妥当性は十分あります。

 すでに学校給食の無償化を実現している自治体は徐々に増えています。2017年度で約4.4%(76自治体)が給食を無償化しています。地方の小規模な市町村が多いようです。

伊勢エビを食べる児童。余った二つ目をじゃんけんで勝ち取った=2020年10月19日、千葉県旭市鎌数の干潟小学校、高木潔撮影拡大伊勢エビを食べる児童。余った二つ目をじゃんけんで勝ち取った=2020年10月19日、千葉県旭市鎌数の干潟小学校、高木潔撮影

実寸大の枝肉パネルで、給食に出される鳥取和牛の説明があった=2020年9月18日、鳥取市立川町7丁目拡大実寸大の枝肉パネルで、給食に出される鳥取和牛の説明があった=2020年9月18日、鳥取市立川町7丁目
 給食無償化を実現した自治体は「地域全体で子どもの教育を支えよう」という意識が高く、給食の食材は地産地消で調達する方針にしていたり、食育に力をいれたりとさまざまな工夫をしています。食を通じて地域への愛着を深めたり、地域のことを知ることはとても良いことではないでしょうか。

 諸外国の状況を見ると、給食費の無償化の状況はバラバラです。北欧のフィンランドやスウェーデンでは小中学校の給食は無償です。数年前に英国では保守党政権下で小学校1,2年生の学校給食が無償化されました。お隣の韓国では約7割の自治体が小中学校の給食を無償化しており、小学校に限れば9割の自治体が無償化を実施しています。


筆者

山内康一

山内康一(やまうち・こういち) 前衆議院議員

 1973年福岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。ロンドン大学教育研究所「教育と国際開発」修士課程修了。政策研究大学院大学「政策研究」博士課程中退。国際協力機構(JICA)、国際協力NGOに勤務し、インドネシア、アフガニスタン等で緊急人道援助、教育援助等に従事。2005年衆議院議員初当選(4期)。立憲民主党国会対策委員長代理、政調会長代理等を歴任。現在、非営利独立の政策シンクタンクの創設を準備中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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