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『粛清裁判』『国葬』『アウステルリッツ』~「群衆3部作」が問う現代の民主主義

セルゲイ・ロズニツァのドキュメンタリー映画を観て

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

「新規まきなおしに事をはじめる」

 カット26の「歴史の天使」からカット30の群衆へ。ロズニツァ氏はその映像に明示的なメッセージを込めているわけではない。しかし、私はこの批評文の最後に、ロズニツァ氏に代わって、「AからZまで」の強制の連鎖を断ち切るべく希望を語るアーレントの『全体主義の起源』の言葉を引用しておこう。

 「この強制と、矛盾のなかで自己を喪失しはすまいかという不安に対する唯一の対抗原理は、人間の自発性に、「新規まきなおしに事をはじめる」われわれの能力にある。すべての自由はこの〈始めることができる〉にある」

 アーレントの「新規まきなおし」「始めることができる」という言葉を思い浮かべれば、群衆の笑顔は批判されるような対象ではない。カット26の「歴史の天使」が折々に私たちを訪れ、「AからZまで」を迫る政治権力に対して、それを強く否定する力を与えてくれればそれでいい。

 12月25日まで東京・渋谷のイメージ・フォーラムで上映。以降、順次全国ロードショー。

拡大イメージ・フォーラムのホームページより

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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