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菅義偉内閣の支持率が発足3カ月で急落した四つの要因

コロナ危機下で不可欠な内閣への世論の信頼回復は可能か

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

経済再生に傾く政権への懸念

 まずは①のコロナへの対応についてである。

 アメリカをはじめ世界のほとんどの国で、新型コロナに対して政権が感染対策と経済再生のどちらに重点をおいて取り組むかが、注視されている。たとえばアメリカの大統領選挙では、経済再生を優先するトランプ大統領が、人命尊重のコロナ対策を優先するバイデン氏に敗れている。

 菅政権はどうか。コロナ対策に取り組んでいることは認めつつも、「Go To トラベル」などへの強硬姿勢をみると、次第に経済再生に傾いているように見える。

 共同通信の調査では、コロナ禍で「感染防止」と「経済活動」のどちらを優先すべきかとの問いに、「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げる人が76.2%に上り、「経済活動」を優先するべきだとの答えは、「どちらかといえば」を含めて21.1%にとどまる。また、政府のコロナ対策を「評価しない」が55%と、「評価する」の37.1%を大きく上回り、「評価する」が上回っていた前月調査とは正反対の結果になった。

 日本中の多くの人たちは今、新型コロナの急速な感染拡大に“医療崩壊”の危機が迫っていると、ひしひしと感じているのであろう。病床や看護師の不足など医療体制の不備は、第1波のときから重大視されていた。だから世論は厳しくなる。にもかかわらず、菅首相が「Go To トラベル」にこだわり、兆円単位の経済対策を次々と発表するのをみて、「経済活動よりも感染防止なのに」と地団太を踏んでいる様子が目に浮かぶ。

 おまけに、そこに費やされるのは、もともと自分たちが払った税金である。使い方をもっと慎重に考えてくれという声が、ますます大きくなっている。

日本学術会議、対中国外交の不手際も響く

 次に、②の他の政策課題への対応についてみてみよう。

 コロナ禍のなか、国民の多くが関心を持つ課題として、日本学術会議の任命拒否問題と、香港や尖閣諸島への中国の対応などが挙げられるだろう。

 菅首相は臨時国会閉会を受けておこなわれた12月4日の記者会見で、学術会議の問題に関して、「私は、かなり(大きく)なるのではないかなというふうには思っていました」と、 “笑み”を浮かべて答えた。

 かなり問題化すると分かっていたなら、なぜ、未曽有のコロナ禍の最中(さなか)に、あえて断行したのだろう。こうしたどこかちぐはぐな対応も、内閣支持率が低下した一つの原因であろう。

 また、民主派が次々と弾圧される昨今の香港情勢について、政府のスポークスマンである加藤勝信官房長官は、弱々しい声で“懸念”を表明するばかり。少なくとも強い声で“深い憂慮”を示してほしかった。

 11月下旬に来日した中国の王毅国務委員兼外相と茂木敏充外相の会談後の共同記者会見も明らかに失敗だった。沖縄県・尖閣諸島の領有権について、王毅外相に一方的な演説の機会を与えてしまった。茂木外相の対応が批判されているが、そもそも共同記者会見を開く必要はなかった。

 こうした対中国外交の不手際も、内閣支持率に影響を与えているのは間違いない。

拡大共同記者発表に臨む茂木敏充外相(右)と中国の王毅国務委員兼外相=2020年11月24日午後、代表撮影

 ③の“身内”の金銭スキャンダルも深刻だ。ここにきて、吉川貴盛元農水相への500万円供与疑惑が発覚。大臣在任中の現金供与は典型的な贈収賄との見方も強く、事件化する公算は大きい。さらに、くすぶり続けてきた安倍晋三前首相の「桜を見る会」をめぐる「カネ」の疑惑も蒸し返された。

 安倍氏も吉川氏も、菅首相とは安倍政権以来、政権中枢を支えてきた“同志”である。いわば身内の金銭スキャンダル、「政治のカネ」という“古典的”なスキャンダルもまた、発足間もない政権にとって、相当の打撃となっている。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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