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コロナ経済苦境下のサウジアラビアで進むワンマン皇太子の未来都市構想

[14]石油収入が激減、生活補助廃止や増税の一方で、「ネオム」事業は継続

川上泰徳 中東ジャーナリスト

生活補助を廃止、付加価値税を3倍に

 さらにサウジのコロナ対策で世界の注目を集めたのは、毎年250万人が集まるメッカ巡礼の実施である。今年は7月末から8月初めにかけての5日間だったが、コロナ対策として1932年のサウジ建国以来初めて、外国からの巡礼者を入れず、参加者は国内居住の外国人ら1万人程度に限定された。メッカ巡礼は例年、8500億円の政府収入になるとされ、巡礼の規模縮小は歳入減への追い打ちともなった。

サウジアラビアのメッカで人数を制限しておこなわれた巡礼 Leo Morgan/Shutterstock.com拡大今年の巡礼は人数が制限された=サウジアラビアのメッカで Leo Morgan/Shutterstock.com

 ジャドアーン財務相は全国的な都市封鎖が続く5月中旬、大幅な歳出削減を含む緊縮財政措置を発表した。政府職員に対して支給していた月1000リヤル(約2万8000円)の生活費補助の支給を6月1日から停止し、さらに7月1日からは日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)を、それまでの5%から3倍の15%に引き上げると発表した。

 付加価値税は長い間、税金がなかったサウジで2018年1月に導入された。2015年に即位したサルマン国王の実子であるムハンマド王子が2017年に皇太子となり、実権をふるうようになって行われた経済・財政改革の一部とみなされている。その時に、ガソリンや電力に対する補助金が削減され、ガソリン価格は引き上げられ、電気料金も家庭用が約3倍に上昇した。一方で政府職員の不満を抑えるために彼らへの生活補助費の支給が始まった。

 今回、コロナ禍に伴う歳入減少に対応するために、一方的に生活補助を廃止し、さらに付加価値税を3倍に上げたことは、

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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