世界と韓国国内に温度差?
2020年12月15日
米国のタイム誌が12月10日(現地)、2020年の「今年のエンターテイナー」にBTSを選出したという。8月に発売された「Dynamite(ダイナマイト)」が、韓国人アーティストとしては初めて米ビルボード・シングルチャートの1位を獲得。新曲「Life Goes On」も、11月30日に初登場1位を飾った。グラミー賞の候補にも挙がっており、この1年はまさに「彼らの年」になったといえる。
「世界が一時停止し、誰もが人とのつながりに苦しんだ年、彼らは成功を収めた」「パンデミック下、世界的な閉鎖と人種差別反対運動の中で、彼らと世界のファンの絆は深まっていった」「彼らはK-POPグループの中では珍しく、反体制的でもあった」「彼らはLGBTQ+の権利について公然と発言し」「そして、彼らは髪をパステルカラーに染めたり、互いの腕をからめあったり、よりニュートラルな『男性のカタチ』を作り出した」……(「タイム」)
タイム誌は彼らが2020年という年を最も代表するエンターテイナーとなった理由を、数字に現れた爆発的な結果とともに、世界的なパンデミックと人種問題という今年の二大イッシューで説明している。さらに彼らと世界のファンとの「水平的な関係性」は確かに新しく画期的なものであったと、こちらも絶賛している。韓国で生まれた「少年たち」は本当にビッグになってしまった。
彼らについては、日本の若者たちの「気づき」も早かった。あれは5年前、2015年だったと思う。
「バンタンのグッズを友だちに頼まれた」
日本から韓国に遊びに来た中学生の姪っ子に言われた。バンタンとはBTSの「本名」である「防弾少年団」(バンタンソニョダン)の略。本国である韓国はもちろん、日本の若者も彼らを「バンタン」と呼んでいた。
姪っ子はジャスティン・ビーバー好きの洋楽ファンでK-POPにはあまり関心がなく、私もそちらの流行には遅れていたが、さっそく韓国の街に「バンタン」を探しに行ってみた。そう言われて注意してみると街に彼らのポスターや音楽はあふれており、韓国の友人の子どもたち(当時、小中学生)なども目をキラキラさせながら「オッパのすごさ」について語ってくれた(オッパとは韓国語で「お兄さん」という意味。韓国では年上のスターをそんなふうに呼ぶ)。
すごい子たちが出てきたと、遅ればせながら私自身も関心をもつことになったが、まさかここまで世界的なスターになるとは思わなかった。
ちなみにBTSが正式な名称となったのは2017年だという。その防弾少年団の英語表記Bangtan SonyeondanがBTSと略されて英語圏などでも爆発的な人気となり、日本でもBTSという呼び方が一般的になった。あの頃の中学生はそろそろ大学生。「BTS法」について韓国の若者の反応を知りたいという依頼をうけて、久しぶりに彼らに質問をぶつけてみた。
韓国国会は12月1日、兵役法改正案を正式に可決した。その内容は「世界的な活躍が認められた大衆芸能分野のアーティストが、軍隊への入隊を30歳まで延期できるようにする」というものだ。対象となるアーティストの基準は、文化体育観光大臣が「韓国の国際的地位を高めるために貢献したと認めるもの」となっている。これはメンバーの1人の入隊期限が間近に迫ったことから立法されたものであることから、韓国では一般的に「BTS法」という通称で呼ばれている。
BTSのメンバーは7人、年齢構成は以下のようになる。RM(1994年9月生)、SUGA(1993年3月生)、JIN(1992年12月)、J-HOPE(1994年2月生)、JIMIN(1995年10月生)、V(1995年12月生)、JUNG KOOK(1997年9月生)。このうち最年長であるJINさんが今年12月4日で満28歳、2021年までに入隊するとみられていたが、まさに誕生日直前の法案通過となった。
「1人の芸能人のために法律まで変えちゃって、韓国の人は怒らないんですか?」という疑問を複数の日本人から言われた。それが「特別扱い」に見えるということだろう。特に過去に韓国芸能界で何度も繰り返された「兵役逃れ問題」を知る人なら、なおさら疑問を持つのもわかる気がする。
ただ、最近の韓国では芸能人も「ちゃんと兵役義務を果たしてこそ認められる」的な風潮があり、その転機となったのは「リ・ジョンヒョク大尉」ことヒョンビン、2011年に彼が「海兵隊」を志願したことだった。
その当時
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