大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント
1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
平常時なら支持されたはず目玉政策を一時的に止めてでも国民のコロナ不安の解消を
菅内閣はそれほどまでに評価されない政権なのでしょうか。筆者はちょっと違うと感じています。結論から言うと、政権担当能力も、政策実現能力もあるが、空気の読み違いが問題だと思います。
菅内閣は、当初から国民生活に直結するような政策を「スピーディー」に実現することにこだわりを持ち続けていました。閣僚の就任会見やその後の定例記者会見でも、行政改革や各種の新政策の実現について、「スピーディー」に行うよう菅総理から厳しい指示が出ている、といった発言が相次いでいることがその証左です。
実際、菅総理の肝いりともいえる携帯電話料金の引き下げは、NTTドコモによる新プランの登場が嚆矢(こうし)となり、今後他社も追随する動きとなることで、欧米諸国と遜色ない料金になる可能性が高まってきました。2050年の「カーボンニュートラル」実現に向けた2兆円の基金創設は、我が国のエネルギー問題に政府が本腰を入れ始めたことを示していますし、デジタル庁創設はマイナンバーカードの普及、健康保険証や運転免許証との一体化など実生活の利便性を高める未来型の政策実現と合わせて評価する声が大きいです。
とはいえ、一方で国民が今、大きな関心を寄せるのは、コロナ禍において生活そのものがどうなるかです。新型コロナ感染拡大をどのように収束するのか、その間の経済対策をどうするのか、といった困難な課題を安倍政権から引き継いだ菅内閣ですが、これまでのところ、「Go To トラベル」の一部地域での先行開始、全国展開、そして一部地域での自粛や停止、全国的な一時停止、という流れに政府の迷走ぶりが如実に表れるなど、医療崩壊が叫ばれるなかで、政府が抜本的な対策を打っている印象は乏しいのが実態です。
これだと、「新型コロナ」という国民の最大関心事に対し、政権として「大きな答え」を出せないため、コロナとはあまり関係のない一般的な政策で実績を積み重ね、有権者の信頼をつなぎ止めようという風に見えてしまいます。
まとめます。国民生活に直結する政策を矢継ぎ早に打ち出したこと、それが河野太郎担当大臣をはじめとする行政改革チームやデジタル化を推進する与党議員の強力な政策実現力によってもたらされたという点において、菅政権が政権担当能力や政策実現能力を持っていることは間違いありません。しかしながら、国民が今、真摯に求めているもの、政府に対して期待していることとは違うことをアピールされても、国民には「政策のミスマッチ」と見えてしまう。
その結果が、内閣支持率の低下だと筆者は考えています。
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