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権力移行期のオマーンを襲ったコロナ禍で増幅される矛盾

[15]新聞・雑誌の発行停止、歳入減で新税の導入

川上泰徳 中東ジャーナリスト

外国人労働者を置き換える「オマーン人化」政策

安倍晋三首相(当時)と会談したオマーンのハイサム国王(右)=2020年1月14日マスカット、代表撮影拡大安倍晋三首相(当時)と会談したオマーンのハイサム国王(右)=2020年1月14日、マスカット 代表撮影

 カブース国王の後を受け継いだハイサム国王は前国王の下で自身が策定を主導した脱石油を打ち出した経済社会改革案「オマーン・ビジョン2040」の実施を掲げた。教育、行政、財政、雇用などの柱があるが、2020年度予算で歳入の72%を占める石油・ガス輸出に依存する経済からの脱却を目指すものである。オマーンは石油の採掘可能年月が2017年時点で15.2年であることから、この20年で産業や労働の脱石油化を達成することが現実の課題となっている。

 脱石油化と並ぶ課題が人口が急増している若者への対策である。オマーン人の年齢中央値は30.6歳で、30歳以下の人口が67%を占める。失業率は2020年は平均2.6%だが、15歳~25歳に限ると、国際労働機関(ILO)の推定で13.7%へと跳ね上がる。コロナ禍以前の2019年も13.1%と高かったが、都市封鎖などコロナ対策によってさらに上昇した。政府としては「アラブの春」が再来しないように、若者たちの不満を抑える雇用創出策が必要となる。

 そこで出てくるのが、人口の45%を占めるインド人やバングラデシュ人など外国人労働者をオマーン人に置き換える「オマーン人化」政策だ。1990年代からこの政策を進めて、外国人労働者をオマーン人に置き換えてきた。現在、政府関係職員ではオマーン人の割合は82%に達しているが、民間部門では約15%にとどまっている。政府は4月末、コロナ感染拡大による失業者増加への対応として、国営企業に2021年7月までに管理職も含めて外国人スタッフをオマーン人に入れ替えるように国王の勅令を出した。国営企業には約80万人のインド人が働いているとされる。

 「オマーン・ビジョン2040」では民間部門

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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