限界ネトウヨと右翼ヘゲモニーの終焉
なぜ右翼の言論・運動が政治的に成功し、そしていま危機にあるのか
木下ちがや 政治学者
「限界ネトウヨ」の誕生
最近の右翼言論についての話題の中心はいうまでもなく「アメリカ大統領選は不正選挙でありトランプは勝った」という陰謀論の席巻である(以下では「トランプ勝ち組陰謀論」とする)。社会学者鳥海不二夫の調査によると、日本の「トランプ勝ち組陰謀論」ツイートは、10万アカウントによる約58万ツイートの集団によってなされたという。そしてこの「トランプ支持層」のうち6割超が安倍晋三前総理を支持する「保守系アカウント」だったという(注1)。
10万アカウントだと日本のツイッターユーザーの1%にも満たないが、数十万フォロワーを持つ右翼言論人がこの陰謀論を扇動し、エコーチェンバー現象を引き起こすことでこのムーブメントは成立したのである。ただこのムーブメントに批判的な保守系アカウントも多数存在しており、この陰謀論に加担する言論人、アカウントは「限界ネトウヨ」と名付けられた。つまり「もう限界値を超えてしまい、後戻りできないところに行ってしまった残念な保守」と
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