神津里季生(こうづ・りきお) 連合会長
1956年東京都生まれ。東京大学教養学部卒。在学時は野球部マネジャー。79年、新日本製鐵に入社。84年に本社労働組合執行委員となり、専従役員の活動を始める。外務省と民間の人事交流で90年より3年間、在タイ日本大使館に勤務。その後、新日鐡労連会長、基幹労連中央執行委員長などを経て、2013年に連合会事務局長に就任、15年より同会長。近著に「神津式労働問題のレッスン」。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
格差拡大とそれをもたらした社会構造にメスを入れてニューノーマルの道に向かえ
日本ではいま、憂慮にたえない事態が続いている。来ることが分かっていた新型コロナ感染の「第3波」に対する備えが、いまだにできていないのだ。
コロナ禍は、もともと立場の弱い方々に、多大な影響を与える。2020年の年の瀬、「第3波」のただなかで、多くの人々の命とくらしが、危機にさらされている。
とにかく人々の命とくらしを守ることに、政府も自治体も社会全体も集中するべきである。
総務省の労働力調査によると、10月の就業者数は前年同月比93万人減だが、その大半は非正規労働者で、85万人減と8ヵ月連続で大幅な減少となっている。85万人のうち53万人は女性である。収入の落ち込みも女性の方が大きい。
そんななか、自殺者の数が目に見えて増えている。7月から11月まで連続5カ月、前年を大きく上回っているのは深刻だ。とりわけ10月は全体で4割の増、女性については8割増だ。この異常とも言うべき数値が、現状の厳しさをまざまざと示す。
振り返れば、新型コロナが広がり始め、政府が対策に乗り出した頃、自殺者の数は前の年に比べて減少していた。それはおそらく、政府の様々な施策検討の様子が、ある意味で、わかりやすく、世の中にみえていたからではないか。10万円給付をはじめ、進め方の稚拙さはあったものの、給付・貸付等の対応策が連日報道されたこともあり、「政府は手を差し伸べてくれる」という期待感があったのだと思う。
しかし、それらが一巡してしまった今、多くの方々が袋小路に追い込まれている。10万円給付も一回きりで、貸付は返済を迫られる時期を迎えつつある。政府は、あらためて、だれ一人取り残さないという明確なメッセージを発し、具体的な追加施策を講じるべきだ。