お金はあるが積極性に乏しい日本企業 そのわけは?
コロナの先にある危機(2)マクロ経済政策が効かない!!
齋藤 健 自民党衆議院議員・元農水大臣
データで見る日本の一流企業経営陣の特徴
いくつかのデータを見てみたい。
まず、日本の上場企業の社長の年齢構成をみてみる。2019年時点で60代以上が54%を占めている。
国際比較だとどうなるか。たとえば最高経営責任者の年齢を比較してみよう。日本のTOPIX500の上場企業の最高経営責任者の平均年齢は63歳、アメリカのS&P500では58歳、欧州のSTOXX600では55歳。しかも、日本の場合、このわずか8年間に3.4歳も高齢化している。
(図1) 下記の区分について2019年11月時点の構成企業を対象とし、最高経営責任者の年齢を取得可能な企業を集計(2018年度は日本499社、米国497社、欧州547社)。 日本証券取引所、S&P Dow Jones Indices、STOXX、 Bloombergを基に作成。
日本:TOPIX500(東証1部上場企業のうち、株式売買量や時価総額が大きい上位500社で構成する区分)
米国:S&P500(米国証券取引所(ニューヨーク証券取引所、NASDAQ等)上場企業のうち、株式売買量や時価総額が大きい上位500社で構成する区分)
欧州:STOXX600(欧州17か国(英国、ドイツ、フランス等)の証券取引所上場企業のうち、株式売買量が大きい上位600社で構成する区分)
また、上場企業の経営者の在任期間は、アメリカで平均7.2年、日本は3.5年。日本はアメリカの半分のほどの期間で、経営者が交代している。
(図2) 米国企業:2017年(S&P500)、日本企業:2019年(日経225)
(出所)Harvard Law School Forum「CEO Tenure Rates」(元データはEquilarによる調査)、Spencer Stuart「Japan Board Index 2019」、日本IR協議会「2016 年度IR 活動の実態調査」を基に作成。
中間管理職はどうか。
リクルートワークス研究所「5カ国マネージャー調査」によると、日本の部長昇進は平均44歳、課長昇進は39歳。アメリカは部長昇進37歳、課長昇進35歳。中国は部長昇進30歳、課長昇進29歳だ。
(図3)
(出所)リクルートワークス研究所「5ヶ国マネージャー調査」(2014年10月)
調査対象:米国、インド、中国、タイ、日本にある従業員100名以上の企業に勤める金属1年以上のマネージャー(課長職及び部長職相当)
調査方法:インターネットモニター調査
回答者数:米国295名、インド250名、中国308名、タイ271名、日本429名
以上、まとめると、日本企業の場合、優秀な人材を登用するタイミングが遅く、なおかつ、その在任期間も短いということになる。あくまでもマクロで見た場合ではあるが。
さらに、外部登用の比率を上場企業CEOで見てみる。
アメリカ企業は23%が外部登用であり、欧州に至っては43%であるのに対し、日本企業はわずか4%に過ぎない。
(図4)(出所)図1と同様。日本証券取引所、S&P Dow Jones Indices、STOXX、 Bloombergを基に作成。
最後に、日本を代表するエクセレントカンパニーである経団連の正副会長会社19社のトップについてみてみる。
全部で19社あるが、そのうち15社は旧帝国大学出身で、残り4社も一流大学。一人を除き全員は生え抜きで、全員男性である。
以上のデータから浮かび上がるのは、極端に高齢化し同質化している日本の一流企業の経営陣の姿である。
ここにこそ、円安になっても輸出額が増えない、異次元の金融緩和のもとでも企業活動が活発化しない、デジタルトランスフォーメーションで劣後する根源的な要因があるのではないか。
極端な話、この部分が是正されない限り、いかなる財政政策、いかなる規制緩和、いかなる金融緩和といったマクロ経済政策を講じたところで、諸外国を凌駕(りょうが)するわが国企業の勢いは生まれないと思う。

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