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【7】司法改革を急げ:デジタル化で刷新せよ

司法が立法や行政に厳しく対峙できなければ、ニッポンの「病」はいつまでも治らない

塩原俊彦 高知大学准教授

興味深い国際比較2:女性の司法進出

 このように、司法制度を国際比較してみると、司法制度改革にかかわる重大な論点がより明確になることがわかるだろう。そこで、つぎに女性の司法進出について比較してみよう。図3は専門裁判官の性別・審級(第一審、第二審、最高審)別分布割合(%)の2010年から2018年までの変遷を示している。総じて、女性の割合が上昇しつつあるのがわかる。だが、最高審における女性の割合は過半数に達しておらず、男女平等という観点からみると、まだまだ改善の余地があることがわかる。

拡大図3 専門裁判官の性別・審級別分布, 2010-2018 (出所)European judicial systems CEPEJ Evaluation Report: 2020 Evaluation cycle (2018 data), Part 1, Tables, graphs and analyses, Council of Europe, 2020, p. 64.

 性別をみると、専門裁判官の女性の割合がもっとも高い国は、「クロアチア、ハンガリー、ラトビア、ルクセンブルク、ルーマニア、セルビア、スロベニアであり、すべての専門裁判官の3分の2以上が女性である」と報告書は指摘している。一方、アルメニア、アゼルバイジャン、アイスランド、アイルランド、イングランド・ウェールズ、北アイルランド、スコットランドでは、女性の比率はまだ40%を下回っている。一般的に、コモンローの国々では、司法職に男性の割合が高いことがつづいているようにみえる。

 検察官の性別を比較すると、2018年の平均で女性が52%、男性が48%となっている。国別にみると、3分の2以上が女性なのは、クロアチア、キプロス、デンマーク、エストニア、スロベニア、イスラエル(オブザーバー国)だ。女性の割合が40%を下回っているのは、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、モルドバ、トルコ、ウクライナ、モロッコ(オブザーバー国)だ。

 なお、東欧諸国の女性の割合が高いのは、これらの国がソ連圏にあった結果、共産主義下の司法制度の影響を色濃く受けてきたことが関係して

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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