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デジタル化の「基本方針」を叱責する

行政にもDXを適用せよ

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年12月21日、デジタル・ガバメント閣僚会議が開催され、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針(案)」などが議論された。興味深いのは、「基本方針」のなかで、「デジタル社会を形成するための基本原則」の第一項目に「オープン・透明」が掲げられている点である。この姿勢は大いに賞賛に値するが、具体性に欠けている。加えて、「デジタル化を推進することで、行政の簡素化、効率化、透明性向上を図る」と書かれていても、ここでも具体的な文言がない。

 何度でも日本政府のデジタル化政策を批判していかなければならないという立場(詳しくは拙稿「皮肉な話だが、隠蔽体質のロシアの「デジタル化」に学べ」を参照)から、ここでは日本よりも進んでいるロシアの状況を紹介しながら、日本政府に喝を入れたい。

拡大デジタル・ガバメント閣僚会議に臨む官房長官時代の菅義偉(左)。右は竹本直一IT相(当時)=2020年6月5日、首相官邸

なぜOGPに入らないのか

 「オープン・透明」を基本原則にするのであれば、なぜ日本政府は、2011年9月に創設された「オープン・ガバメント・パートナーシップ」(OGP)に遅ればせながらも加盟すると決意しないのか(OGPについては拙稿「台湾に学べ:日本の遅れたデジタル・ガバメント政策」を参照)。菅直人首相の在任期間(2010年6月8日~2011年9月2日)にかかわる時期にOGPに加盟しなかったのだから、菅直人政権を批判しつつ、「デジタル化」を本格的に推進するとして、菅義偉首相の肝いりでOGPに加盟すると表明すればいいだけなのに、「基本方針」のなかには、OGPの話などまったく出てこない。2020年12月時点で78カ国がOGPに加盟しているが、日本は中国、ロシア、北朝鮮などとともにOGPに加盟していない。はっきり言えば、「日本はこんな国と同じなのか?恥を知れ」という事態が長くつづいているのだ。

 こんな日本政府だから、「オープン・透明」を掲げながらも、「基本方針」のなかで「オープン」が登場するのは、「オープン・透明なデジタル社会を目指す」というところと、「オープンデータ」という用語の部分にすぎない。つまり、あくまで言葉で「オープン」を強調するだけで、「オープン・ガバメント」をめざすつもりなどさらさらないという印象しか受けない。

 「基本方針」には、「デジタル社会の形成のため、例えば以下の事項に関して政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策について、施策の目標や達成期間を明記した「重点計画」を作成・公表することとする」とある。だが、その事項として挙げられているのは、①ネットワークの整備・維持・充実、②データ流通環境の整備、③行政や公共分野におけるサービスの質の向上、④人材の育成、教育・学習の振興、⑤安心して参加できるデジタル社会の形成――にすぎない。

 第一に掲げられた「オープン・透明」を実現するための「重点計画」を作成するつもりが最初からないのである。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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