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国民投票と住民投票~直接民主制の威力と魅力(下)

「社会に分断をもたらす」のは悪なのか?

今井 一 ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 「国民投票と住民投票~直接民主制の威力と魅力(上)」では、大阪市、真鶴町もスイス、イギリスも、住民投票・国民投票が行われたことによって、多くの人がいがみ合ったり社会が分断されたりしたわけではないと論じてきた。ただし、私はそうした投票実施によって社会的分断が生じたとしても、それを一概に「悪いこと」だとは考えない。

 近年の日本社会の一つの特徴だが、地域や職場や学校で「政権への評価」、「原発再稼働」など政治について話題にするのはやめよう、議論するなんてありえないといった空気が強まりつつある。大学生など若者の間でその傾向が顕著なのだが、議論をしたらクラスでギクシャクしてしまうからと、意見のぶつかりあいを嫌って未然にそれを回避する。そういう姿勢は、程度の差こそあれ地域や職場においても常態化している。それでは民主主義は鍛えられず、どんどん弱まってしまう。

 「原発」をめぐって大きく揺れた新潟県の巻町も刈羽村も、臆することなく「異議あり」と声をあげ起ちあがった人たちがいたから町内で議論が巻き起こり、民主主義と市民自治が育まれ強化された。そして、そうした例は当然のことながら諸外国の国民投票でも数多ある。

 例えば、カトリック教会から強い精神的支配を受けているイタリアやアイルランドにおいて、「離婚の合法化」「人工妊娠中絶」をめぐり進歩派の女性たちが中心となって声を上げ、一定数の国民が信者同士や家族間で厳しく対立した。そのことによって「社会的分断」をもたらしながらも、両国とも国民投票でこの問題に決着をつけた。

[50.28%×49.72%]という僅差で離婚の合法化が決まったアイルランドの国民投票(1995年11月24日実施)。写真は離婚合法化「賛成派」のキャンペーン。Eamonn Farrell撮影
拡大[50.28%×49.72%]という僅差で離婚の合法化が決まったアイルランドの国民投票(1995年11月24日実施)。写真は離婚合法化「賛成派」のキャンペーン。Eamonn Farrell撮影

 「分断」をもたらすのは悪いことなのかということを、この「離婚の合法化」という事例で考えたい。

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筆者

今井 一

今井 一(いまい・はじめ) ジャーナリスト・[国民投票/住民投票]情報室事務局長

 1991年以降、ソ連、ロシア、スイス、フランス、イギリスなどで国民投票の取材を重ね、国内では新潟県巻町、名護市、徳島市など各地で実施された住民投票を精力的に取材。2006年~07年には、衆参各院の憲法調査特別委員会に参考人及び公述人として招致され、国民投票のあるべきルールについて陳述する。著書に『CZEŚĆ!(チェシチ)──うねるポーランドへ』(朝日新聞社)、『住民投票』(岩波書店)、『「憲法9条」国民投票』(集英社)、『国民投票の総て』、『住民投票の総て』(ともに[国民投票/住民投票]情報室)など。

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