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国民民主党「憲法改正に向けた論点整理」の落とし穴

問題解決の正解が改憲なのか?

馬奈木厳太郎 弁護士

キーワードは「規範力強化」

 2020年12月4日、国民民主党の憲法調査会(会長:山尾志桜里衆議院議員)が、「憲法改正に向けた論点整理」(「論点整理」)をまとめました。

拡大日本国憲法の公布原本=国立公文書館蔵
 「論点整理」は、「過去から受け継いだ『人権尊重・国民主権・平和主義』という価値の継承のために、いま憲法の規範力を強化し、未来へとその価値をつないでいく」ためのものと位置づけられ、「憲法の規範力の強化」がキーワードとなっています。それはまた、現行憲法の一定部分について、規範力が揺らいでいる、あるいは規範力が及んでいないといった認識が前提とされていることを意味しています。

 そこで、本稿では、「論点整理」が「語ったこと」と「語らなかったこと」に分けて、若干の検討を試みたいと思います。

 現行憲法は、大きく人権条項と統治機構のパートに分かれます。

 「論点整理」は、現行憲法に対する基本的な評価を次のように述べています。

 「現行の日本国憲法は、人権尊重・国民主権・平和主義といった基本原理の下、政治プロセスの合理性・正統性を確保するため国家権力の構成・統制と個人の人権保障を定めており、全体として高く評価すべきものであって、今後も、この基本原理や体系は維持すべきである」

 そのうえで、人権条項と統治機構のそれぞれについて次のように述べています。

 「人権分野において、現行憲法制定時には想定していなかった時代の変化に対して、憲法の定める『人権カタログ』が必ずしも十分に対応しきれていない面が見られることも事実である」

 「統治機構分野においては、そもそも日本国憲法は規律密度が低い(=条文の抽象度が高く、また、条文の分量が少ないため、法規範として規律・統制する力が弱い)ため、解釈あるいは不文律で補わなければならない余地が相当に広いことが認識された。その広い余地を解釈ないし不文律で埋める際に恣意性が働き過ぎると『人の支配』に陥るおそれがあり、その積み重ねが三権分立のバランスを歪め、憲法の規範力とそれに対する国民の信頼を揺るがせ、結果的に、『法の支配』の空洞化を招来せしめていると言わざるを得ない」

 こうした問題意識をふまえて、人権条項については、人権保障のアップデートとして、「1 デジタル時代の人権保障」で、サイバー空間を含めた「個人の尊重」、「情報自己決定権」の明記、デジタル・デモクラシーへの対応などが取りあげられ、「2 その他人権保障の分野において検討すべき論点」で、①両者の合意による婚姻の保障、②男女共同参画、③子どもの権利、④リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)、⑤教育環境の整備、⑥尊厳ある社会保障、⑦外国人・法人の人権、が取りあげられています。

 また、統治機構については、地方自治の発展・強化として、地方自治の基本原則(住民自治、団体自治、補完性の原則)の明記などが取りあげられ、統治のあり方の再構築として、「1 政治部門における権力のリバランス」で、①臨時会の召集期限の明確化、②内閣による衆議院解散権の制限が取りあげられ、他にも裁判所による政治部門の統制強化や平和主義(自衛権・自衛隊の統制)、合区の解消、両院の役割・機能、オンライン審議、政党条項、直接民主制などが取りあげられています。

 なお、基本原理にかかわる部分では、皇位継承と緊急事態条項についても取りあげられています。

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筆者

馬奈木厳太郎

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう) 弁護士

1975年生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。 福島原発事故の被害救済訴訟に携わるほか、福島県双葉郡広野町の高野病院、岩手県大槌町の旧役場庁舎解体差止訴訟、N国党市議によるスラップ訴訟などの代理人を務める。演劇界や映画界の#Me Tooやパワハラ問題も取り組んでいる。 ドキュメンタリー映画では、『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督、2015年)企画、『誰がために憲法はある』(井上淳一監督、2019年)製作、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(平良いずみ監督、2020年)製作協力、『わたしは分断を許さない』(堀潤監督、2020年)プロデューサーを務めた。演劇では、燐光群『憲法くん』(台本・演出 坂手洋二)の監修を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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