花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
リーダーが旗を掲げ、国民はそれに従いついていく。統治の基本形態だ。リーダーが発するメッセージこそが旗だ。国民にメッセージが届かないとは、国民に旗が見えないということだ。どこに旗があるのか、自分はどこに向かって進めばいいのか。国民は右往左往だ。
欧米に比べ、日本は強制力のある罰則はいらないと言われた。国民はリーダーの下、一糸乱れぬ行動をとる。オーケストラの指揮者がコンタクト棒を一振りすれば、国民はそれに従っていく。マスクが必要となれば、法律などなくても国民のほとんどがマスクをする。それが日本だと言われた。したがって、国民にメッセージが届かないとすれば由々しきことと言わざるを得ない。
11月、政府はこれからが「勝負の3週間」だとし、ここで踏ん張れるかどうかが今後を左右するとした。だから国民の協力を強く求めたいと訴えた。3週間が経ち、勝負の結果は誰の目にも明らかとなった。敗北だ。感染は一向に減らず、それどころか連日「過去最多」の見出しが躍る。政府は、勝負の3週間で国民の行動変容を期待した。現実には国民の行動は何ら変容しなかった。3週間が過ぎ去り、4週間目に入っても、国民が政府の危機感を共有し、その行動を変容させたようには見えない。連日、人出は減るどころか、場所によっては増えてさえいる。国民は政府のメッセージを無視しているかのようだ。
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