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暗闘、駆け引き、失速、混迷……2020年日本政治の検証と21年の展望

新型コロナ、安倍政権退陣、菅新政権誕生、解散・総選挙……激動の政治の来し方行く末

星浩 政治ジャーナリスト

二階氏は菅氏は「脈あり」と見定めた

 30年ほど前、田中・竹下派で中村氏と同じ釜の飯を食った二階俊博幹事長も、5月には「ポスト安倍」に向けた動きを察知していた。コロナへの対応が後手に回り、安倍政権への逆風が強まっていた。「安倍首相は秋まで持つまい。自分が次の政権でも生き残るにはどうすればいいのか」と思いを巡らせていた。

 通常国会が閉幕した6月17日。二階氏は東京・東麻布の中国料理店で菅官房長官と会食した。森山裕国会対策委員長らが同席した。冒頭で菅氏が「150日間の長丁場、お疲れさまでした」と二階氏らに感謝した。料理がひと段落した後、二階氏が話しかけた。「菅さん、あんたも次のことを考えないとね」。安倍首相の後継に手を上げてはどうかという誘い水だった。部屋中が一瞬、静まり返った。

 「いやいや」と笑いながら答えた菅氏。二階氏は「脈あり」と見定めた。この後、菅氏は二階氏にとって「ポスト安倍」に向けた有力なカードとなっていく。

安倍首相は岸田政調会長を推していたが……

 安倍首相は後継に岸田文雄政調会長を推していた。岸田氏は2018年の総裁選で出馬を見送り、安倍氏を支持。総裁選は安倍氏と石破茂元幹事長との一騎打ちとなった。岸田派(宏池会)が安倍氏を推したことでしたことで安倍氏圧勝の流れができた。

 安倍氏が岸田氏を推したのは、この「恩義」に加えて、岸田政権なら安倍氏の影響力を残せるという計算があった。安倍氏の指南役でもある読売新聞の渡辺恒雄主筆も、岸田氏を推していた。渡辺氏は、岸田氏の父親、故文武氏(元通産省中小企業庁長官、衆院議員)の友人だった。

 岸田氏自身も安倍氏からの事実上の「禅譲」を期待していた。一方で、石破氏も総裁選に意欲を示し、「反安倍」の路線を鮮明にしていた。石破政権になれば、森友問題や桜を見る会の問題などが再調査され、安倍氏の影響力が大きくそがれていくことは明らかだった。

 そうした状況下で、二階氏の打つ手は巧みだった。石破氏を「有力な総裁候補」と持ち上げて、安倍氏を揺さぶる。岸田氏については、「政策判断が優柔不断で、日本を任せられない」と不満を明らかにしていた。次第に二階氏の求心力が強まっていったが、二階氏は「菅後継」というカードを表に出すことはなかった。

拡大自民党の役員会に臨む菅義偉首相(右)と二階俊博幹事長=2020年12月15日、東京・永田町の自民党本部

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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