星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト
1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
新型コロナ、安倍政権退陣、菅新政権誕生、解散・総選挙……激動の政治の来し方行く末
安倍首相は連日のコロナ対策の心労もあって、持病の潰瘍性大腸炎の再発に悩まされていた。8月17日、慶応病院で検査と診察を受けた。7時間ほど滞在したが、そのうち6時間ほどはベッドで眠っていたという。疲労は極限に達していた。
8月24日にも再び慶応病院で診察を受けた安倍氏は、首相を続けることは困難だと判断。28日には退陣を表明した。7年8カ月の長期政権が幕を閉じることになった。
二階氏の動きは素早かった。翌29日、国会近くのホテルで森山国対委員長、林幹雄幹事長代理と総裁選の日程などを話し合った後、「菅さんの考えも聞いてみよう」と提案。マスコミに気づかれない場所を探すことになり、東京・赤坂の衆院議員宿舎内の会議室を予約した。夜8時過ぎ、二階、森山、林の3氏に菅氏が加わって、総裁選の方法や日程を詰めた。
ひとしきり、話し合いが終わったところで、二階氏が切り出した。
「こうなったら菅さん、あんたがやればいい」
森山、林両氏の視線も集まる中、菅氏が突然、起立し、頭を下げた。
「よろしくお願いします」
初めて口にする出馬表明だった。
二階氏は、二階派の幹部でもある林氏に命じた。
「派閥の全員に菅さん支持の署名を書かせろ。書かない奴は即、除名だ」
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