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菅政権が推進する新自由主義にひそむダブルスタンダードのあさましさ

権力と巨大資本のインナーにいる者と外にある者とで正反対のロジックを適用する身勝手

斎藤貴男 ジャーナリスト

菅政権で新自由主義がいっそう推進

 もちろん経済とは、「ゾンビ企業」論だけで解決できるほど簡単でも単純でもない。すでに失業者が溢れている状況で、さらに中小零細を潰しまくればどうなるか。国内の経済社会は「新陳代謝」以前の状況に陥るのが必定ではないか。

 それでも、やる。社会的弱者には徹底して酷薄な、新自由主義色の濃い2021年度予算案は、いかにも菅義偉政権らしい。なぜなら彼は、総務副大臣を務めていた小泉純一郎政権時代の上司だった竹中平蔵・元総務相(パソナグループ会長、東洋大学教授)に心酔していると伝えられるからだ。はたして首相就任後は、この学者政商とその周辺の面々をブレーンとして重用している。

拡大パソナの内定式で講演した竹中平蔵氏=2020年10月1日、兵庫県淡路市

 階層間の格差をとめどなく拡げてきた新自由主義は、通常、規制を緩和ないし廃止して市場原理に任せれば万事うまく回る、と説く経済思想だと理解されている。ただし、現実には誰もが同じスターラインから出発できるわけではないので、規制がなければ当然、もともと恵まれた立場の者が圧勝し、そうでない者は排除される結果だけが招かれる現実は周知の通り。

 こんな、安倍晋三政権でも継続されていた、新自由主義に基づく構造改革路線は、菅政権でよりいっそう推進されていくことになる可能性が高い。

 ところが――。

市場原理と矛盾する日本銀行のETF“爆買い”

 市場原理のロジックとは対極にある「操作」が、過去10年来、とりわけ安倍政権下で重ねられてきた事実は、さほど広くは知られていない。日本銀行によるETF(Exchange Traded Funds=上場投資信託)“爆買い”のことである。

 ETFとは東証株価指数(TOPIX)や日経平均などの株価指数に連動する運用成果を目指す投資信託のことだ。過去10年にわたってETFを買い増し続けた結果、日銀の実質的な株式保有額(時価換算)がこの12月までに45兆603億円に達し、世界最大の機関投資家と呼ばれるGPIF(Government Pension Investment Fund=年金積立金管理運用独立行政法人)を抜いて、日本企業の最大株主となった(ニッセイ基礎研究所の試算による)。

 株式市場における両者のプレゼンスは凄まじく、すでに3月末の段階で、株式保有額の合計が東証全体の時価総額の12%を占めるに至り、東証1部上場企業の8割に当たる約1830社で事実上の大株主になってしまったという(朝日新聞10月23日付朝刊)から恐れ入る。

 たとえば「ユニクロ」のファーストリテイリングでは、創業社長の柳井正氏に次ぐ規模の株主になっている計算だ。

 この奇天烈きわまりない状況は、“アベノミクス”の“売り”とされた株高を演出し、それが困難な局面では株価の下支えをしてきた。要は「官製相場」で、これだけでも市場原理とは明らかに矛盾する。

 それでもGPIFによる株式投資は、安全面での課題は残るにしても、不自然だとは言えない。年金積立金の管理・運用が使命である以上、利回りの確保とリスクヘッジを図ってポートフォリオに株式投資を組み込むことは、有力な選択肢であるからだ。

 問題は日銀のほうである。その根は相当に深く、しかも今となっては方向を転換することも容易でない。“取り返しがつかない状態”に、限りなく近づいていると言っていい。

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筆者

斎藤貴男

斎藤貴男(さいとう・たかお) ジャーナリスト

1958年、東京生まれ。新聞・雑誌記者をへてフリージャーナリスト。著書に『決定版 消費税のカラクリ』(ちくま文庫)、『ちゃんとわかる消費税』(河出文庫)、『戦争経済大国』(河出書房新社)、『日本が壊れていく――幼稚な政治、ウソまみれの国』(ちくま新書)、『「東京電力」研究──排除の系譜』(角川文庫、第3回「いける本大賞」受賞)、『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』(朝日新書)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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