メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

国外逃亡から1年。ゴーン事件への日本の司法・日産の対応は正しかったのか

年明けから事情聴取を開始するフランス検察当局と国連人権委員会の報告の行方

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

ルノーを巻き込んだ社内的な解決はできなかったのか

 「ゴーンに物言える役員いない」という発言は、全取締役が「イエスマン」だったことを意味するが、その中心であった西川CEO(当時)は、ゴーン元会長逮捕劇を単独記者会見で正当化したものの、肝心のゴーン元会長も、その腹心の部下にも、現段階では有罪判決が出るかどうかさえわからない。それどころか、グレッグ元取締役の証言一つで西川氏自身も辞任に追い込まれており、結局のところ「相討ち」に過ぎなかった。

 言語も文化の違う二つの企業が持ち株会社を利用した形式的な統合をしても、結局は融合できず、立場の弱い日本人は肝心な時に正しい判断を出来なかったということか。

 西川氏は、パリから東京に到着した上司を抜き打ちで逮捕させるような行動を採る前に、当人に問題をぶつけるべきだったのだろう。

 素朴に疑問を感じるのは、仮にゴーン元会長が西川CEOの立場なら、日産の取締役会を通じた解決を試みたのだろうかということである。ルノーの南米子会社でリストラという厳しい仕事を成功させてきた彼ならば、古巣でもあるルノーにも連絡し、社内解決を図ったのではないか。それが会社も自分も守るという経営者の判断だと感じる。刑事で訴えるかどうかは、その後であっても何の問題もない。

 本件の最大のミステリーは、ゴーン事件が巷間言われているルノーの子会社化を避けるためではなかったのであれば、ゴーン元会長に物言えない日産の役員でも、ルノーという親会社を使えば、社内的な解決ができたのではないかということに他ならない。

拡大辞任発表から一夜明け、報道陣の質問に答える日産自動車の西川広人社長=2019年9月10日、東京都内

国連人権委員会は今後どう動くのか

 国連人権委員会の「恣意的捜査に対するワーキング・グループ」の報告書は、東京地検特捜部など日本の司法当局のゴーン元会長の扱いにフォーカスしているが、内容自体は日本の「人質司法」と呼ばれる制度や構造のすべてを網羅している。また、この意見書によれば、ワーキング・グループはフォローアップをする予定にある。

 国連人権委員会のウェブサイトには、個々のワーキング・グループの具体的な最終目的は書かれていないが、その一方で意見書にもある通り、すべての国連加盟国を巻き込んで「恣意的捜査」を廃止させることを意図していることは間違いないだろう。

・・・ログインして読む
(残り:約1908文字/本文:約5976文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

酒井吉廣の記事

もっと見る