花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
新型コロナに揺れた2020年……検証と新年への展望
2020年、新型コロナウイルスによるパンデミックは世界を未曽有の混乱に陥れた。この一年で8000万人以上が感染、死亡者は少なくとも170万人に上る。世界全体のGDPは7%押し下げられ、一部を除き未だ回復の兆しがない。
感染症の危険はかなり以前から指摘されていた。テロと感染症は、常に今後起こり得る脅威のトップとしてG7など様々な国際会議の議題に取り上げられていた。しかし、テロはともかく、感染症は議題には上っても、人々の熱心な議論の対象となることはなかった。
これはブラック・エレファントといわれる。誰もが、危機がいつか起きることは分かっていながらその対処を先送りする。ブラック・スワンが、起こりえないことが、ある日突然出現し人々を混乱に陥れるのとそこが違う。
従って、ブラック・エレファントである今回の感染症は、一言でいえば「人類のスキを突いた」のであり、「スキは、分かっていながら対応しようとしなかった結果生まれた」。
問題は、感染症の脅威が今回一回限りでないことだ。現代社会は、高度に相互依存が進んだ複雑な社会だ。グローバル化が進行し世界はますます一体化する。感染症にとり、蔓延のための絶好の条件がそこにある。
我々は、いつ別のパンデミックが起きても不思議でない世界に住んでいる。従って、次の感染症に対する備えを怠ってはならない。それができるか、感染症は「人類の先送りの習性」をあざ笑い、我々を試している。
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