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「安倍晋三は政治家にふさわしくない」と学校で教える必要性

「道徳的明快さ」を教育現場にも

塩原俊彦 高知大学准教授

 筆者はこのサイトにおいて、中立性という客観性を装うことに奔走してきた日本のジャーナリズムを批判し、「道徳的明快さ」の必要性を指摘してきた(「「道徳的明快さ」が求められるジャーナリズム:客観性、中立性よりも大切な価値から再出発せよ」「バイデン擁護の偏向報道に喝:米国のジャーナリズムにみる「道徳的明快さ」不足」」を参照)。ここでは、この「道徳的明快さ」を教育現場にも適用し、「安倍晋三前首相が政治家にふさわしくない」と明確に教える必要性を説きたい。

 衆議院調査局の調べで、事実と異なる国会答弁を118回も繰り返してきた安倍が少なくとも道徳的にみて政治家として不適格だと教えることは何の問題もないはずだ(朝日新聞「「事実と異なる」答弁118回」を参照)。だが、いわゆる「政治的中立性」を要請する教育基本法を盾にして、教育現場での「道徳的明快さ」を求める動きに「待った」をかける人々がいるのはたしかだろう。それでも、安倍の嘘の問題は教育現場における絶好の材料であり、大手を振ってより多くの人々が「安倍のようにはなるな」とか、「安倍は政治家にふさわしくない」と教育してほしいと心から願っている。

選挙年齢引き下げによる主権者教育重視

拡大校内に設置された期日前投票所で授業時間の合間に投票をする小浜高校の生徒ら=2017年10月16日、雲仙市小浜町

 そこでまず、「政治的中立性」の話をしたい。この問題がとくに注目されるようになったのは、選挙年齢の引き下げで高校生の一部が有権者となるという制度変更の結果だ。

 2015年6月、選挙権の年齢について、満18歳以上満20歳未満にも認める公職選挙法などの一部を改正する法律が成立し、2016年6月19日に施行された。思い起せば、「選挙権を20歳から18歳に引き下げるべきである」という筆者の投稿が「朝日新聞」の「声」の欄に掲載されてから40年ほどが経過したことになる。

 この変化を機に、高校生を対象とする「主権者教育」への関心が高まる。主権者として選挙権を実際に行使できるようになる者への教育を高校で施す必要性があるとの見解からであった。高校在校中に18歳になる生徒がいる以上、文部科学省は対応を迫られ、文科省と総務省の連携により「私たちが拓く日本の未来」(生徒用副教材、教師用指導資料)が作成されるに至る。その際、「政治的中立性」を保ちつつ、どのように政策論争や模擬選挙を通じて教育すべきかが問題となったのである。

 戦時中、「挙国一致・尽忠報国・堅忍持久」をスローガンに、国民精神総動員運動が展開された過去への反省から、1947年に制定された教育基本法では、第八条で「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」とし、二項で「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と定めていた。2006年12月に制定された改正・教育基本法でも、第十四条に同じ規定が維持された。この規定を根拠に、「政治的中立性」が要請され、教育現場でこれをどう確保するかが課題とされてきたのである。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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