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小泉進次郎よ、「もっと世界の潮流に近づけ」

日本政府のプラスチックごみ対策は付け焼き刃だ

塩原俊彦 高知大学准教授

 安倍晋三前首相は2018年6月、カナダで開催されたG7シャルルボワ・サミットで、ドナルド・トランプ米大統領とともに自国でのプラスチック規制の強化をはかる「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。世界から嘲笑される事件であった。

 当時の環境大臣は元大蔵官僚の中川雅治で、産業界との調整に時間が足らなかったことなどを理由に署名しなかったと説明するにとどまった。安倍にも中川にも環境対策の重要性に対する主要国の差し迫った危機意識が共有されていたとは言い難い。嘘で固めた安倍政権が長くなかで、日本の閣僚は世界の潮流に関心を示さず、サミットのような場で赤っ恥をかくようなことがしばしばみられるようになっていたのである。こうした状況は安倍政権を継承する菅義偉首相になって以降も、基本的にまったく変わっていないのではないかと危惧される。

G7サミット拡大会合の集合写真に納まる各国首脳ら=2018年6月9日、カナダ東部シャルルボワ、時事通信代表撮影

海洋プラスチック問題への危機感のなさ

 問題となった海洋プラスチック憲章には、①2030年までに、100%の再利用可能、リサイクル可能、またはどうしても再利用やリサイクル不可能な場合は熱源利用などの他の用途への活用(リカバリー)に転換可能なプラスチックに向けて産業界と協力する、②代替品の環境への影響を十分に考慮し、単一使用プラスチックの不必要な使用を大幅に削減する、③プラスチックごみの削減のためにグリーン公共調達を利用し、プラスチックの二次市場やプラスチック代替品を支援する、④2030年までに、利用可能なプラスチック製品のリサイクル材利用率を少なくとも50%引き上げることに向けて産業界と協力する、⑤2030年までにプラスチッキ包装の少なくとも55%をリサイクルないし再利用し、2040年までにすべてのプラスチックを100%リカバーするように産業界や他のレベルの政府と協力する――などの規定が含まれていた。

 実は、G7サミットで海洋プラスチック問題を扱うのは2015年のドイツでのサミット以降、ずっとつづいていた。ゆえに、時間が足らなかったというのは理由にならない。はっきり言えば、安倍に海洋プラスチック問題に対する危機感がなかったからであった。あるいは、環境問題に不熱心な米国以外の国々の危機意識を安倍が共有できていなかった結果だ。

G20を機に軌道修正

 世界の潮流に敏感であれば、2017年7月、中国政府は「国務院外国廃棄物持ち込み禁止令」を出し、「環境負荷が高く、国民に強く反映される固形廃棄物の輸入を禁止する」として、プラスチックごみ、分別されていない古紙などの輸入を禁止したことにもっと注意を払うべきであった。日本は2018年6月に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書のなかで、一人あたりのプラスチック包装容器の廃棄量が2014年の数値で米国に次いで世界第2位であることが示された(図1参照)。日本は世界から批判の的となって

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