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アメリカに「二人の大統領」の悪夢~世界はこの“二頭政治”にどう備えるか

アメリカの分断・二極化の傾向はバイデン政権下修復されるどころか加速する

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

大統領再選は難しいバイデン氏

 トランプ大統領は現在74歳。バイデン次期大統領はそれより上の78歳である。4年後の大統領選では、トランプ氏が78歳。バイデン氏は82歳になる。

 今回、バイデン氏が大統領に当選できたのは、相手候補であるトランプ氏も高齢であったことも大きい。もし相手候補が60代と若かったら、当選は至難の業だったであろう。

 次期の大統領選の際、82歳になるバイデン氏は、再選を狙わず立候補しない公算が大きい。86歳まで激職である大統領をつとめるのは、さすがに無理であろう。

 仮にバイデン氏が立候補をすれば、トランプ氏が圧倒的に有利になるだろう。高齢問題にくわえ、これから4年間のバイデン政権の実績をトランプ氏が徹底的に攻撃するからだ。次の選挙に際しトランプ氏が「ようやく私もバイデン大統領の初当選の年齢になりました」とうそぶけば、民主党から高齢を批判されにくくなる。そんなことは、すでにトランプ氏は計算ずみであろう。

拡大次期米大統領のジョー・バイデン氏=2019年11月2日、ランハム裕子撮影

「二頭政治」の三つの類型

 本稿の冒頭で、米国に二人の“大統領”が存在するような状況が生まれるかもしれない、と書いた。このように2人のリーダーが存在する「二頭政治」は、これまでも数多くある。その類型はさまざまだが、大きくみれば、①補完、②競合、③偽装――に大別されよう。

 ①は、たとえばドイツのように。大統領が元首として国を代表するが、実質的には首相が強い政治的権限を持っており、相互に補完的な役割を果たすという制度で認められた関係だ。英連邦諸国や日本といった「君主制」をいただく国も、この形に入る。

 ③は、ロシアの現状を頭に置いている。プーチン大統領とメドベージェフ首相が、互いにその地位を交換して独占してきた。これは憲法上の手続きの偽装に他ならない。

 ②は、古代ローマの「寡頭制」などを念頭においている。制度上というより、実質的に力が均衡する二人の実力者が、競い合って支配をする形だ。一方が合法的支配、もう一方が実力支配という形もある。

 日本では1980年代、自民党内の最大派閥を率いた“無冠”の田中角栄・元首相が、いわゆる“キングメーカー”として君臨、時の首相と対峙したが、こうした状況はまさにその好例といえる。ただ、これは両者が同志的関係だったが、今回の米国の場合は敵対関係にあるだけに、容易に収拾することができない。バイデン氏とトランプ氏もこれから二人の“大統領”がいあるかのような背中を向け合った「二頭政治」を繰り広げる可能性が高いのではないか。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

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