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軍主導のエジプト政権下、コロナ蔓延でさらに強まる言論規制

[17]ジャーナリストの逮捕、SNSへの規制強化、医師や看護師も拘束

川上泰徳 中東ジャーナリスト

2カ月で10人を超えるジャーナリストの逮捕

 3月11日、エジプト政府はコロナ関連のメディア規制について首相府のフェイスブックで明らかにした。「コロナ感染について虚偽のニュースやうわさを報道したり、ソーシャル・メディアで拡散したりすることは、公共の治安を撹乱し、国民を怯えさせ、公共の利益を損なう行為である。政府の担当省庁が提供しない虚偽の情報を報道する者に対しては、法的措置をとる。コロナ関連の情報はすべて保健省が提供したものでなければならない」。

 エジプトでは「アラブの春」後に選挙で選ばれた大統領が、イスラム政治組織「ムスリム同胞団」のメンバーだったことから、2013年のクーデター後、同胞団を「テロ組織」として非合法化し、同胞団メンバーを逮捕、さらに大統領や政府、軍を批判すれば、「テロ組織に関与」という疑いで拘束する例が激増した。国際的な人権組織「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)は拘束されている政治犯の数を6万人と推計している。

 コロナ感染拡大によって政府によるメディア統制はさらに強まった。5月21日にカイロに拠点を置くアラブ人権情報ネットワークは「コロナウイルスで始まったジャーナリストの逮捕、2カ月で10人」というレポートを公表した。逮捕容疑は「テログループに参加して、嘘のニュースを流し、社会的なメディアを乱用して、治安を脅かした」ことだという。

 10人のうちの1人については、「フェイスブックでコロナ患者数についてコメントし、政府発表の数字を批判した。彼はテロ組織に参加し、偽のニュースを流したことで訴追されている」と記されている。

 エジプトでは「アラブの春」の際にツイッターやフェイスブックを通じてデモが広がったことから、シーシ政権はSNSへの規制を強めている。2018年には「サイバー犯罪規制法」を国会で通過させた。閉鎖や処罰の対象になるのは「国家の治安と安全」と並んで、「公共の道徳」「社会の平和と安全」「家族の価値」「個人のプライバシー」など、当局がどのようにでも解釈できる曖昧な内容となっている。

 国際的人権組織「アムネスティ・インターナショナル」は2020年5月3日付のレポートで、コロナ感染に絡んで拘束されたジャーナリストは12人で、それ以前の拘束者数と合わせて計37人としている。

 国際組織「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)によると、エジプト人ジャーナリスト、ムハンマド・ムニール氏は7月13日、カイロ郊外のトーラ刑務所内でコロナウイルスに感染し、

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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