緊急事態宣言再び 政府の「Go To」への固執が招いた危機と克服すべき課題
講ずべき対策を怠って感染を広げたことを政府は猛省し拡大阻止に多角的に取り組め
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士
令和3年1月8日、菅義偉総理が東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に、2度目の緊急事態宣言を発出しました。また週明けには、大阪、京都、兵庫の近畿三県も緊急事態宣言の発出の要請を検討しており、政府もこれに「状況を確認した上で対応する」としており、日本は今まさに新型コロナウィルス感染症対策の正念場を迎えています。
既に各所で様々議論がなされている所ではありますが、日本の今後を左右する極めて重要な問題ですので、緊急事態宣言の中身や発出の経緯、そして1月18日に開催される国会において最大の論点となる新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」と言います)の改正について、私見を述べたいと思います。

緊急事態宣言を出した後の記者会見で、質問に答える菅義偉首相。右は政府分科会の尾身茂会長=2021年1月7日午後6時20分、首相官邸
具体的措置は「飲食店の営業時間短縮」ただ一つ
まず現在の緊急事態宣言の法的枠組みですが、特措法32条は、政府が緊急事態宣言を発出するに際して、政府本部長(総理大臣)が、
①緊急事態措置を実施すべき期間、
②緊急事態措置を実施すべき区域、
③緊急事態の概要
を公示し、
④緊急事態措置の実施に関する重要な事項を定める、
ものとしています。
そしてその実施については、主に都道府県本部長である都道府県知事が実務を担うことになります(特措法45条以下)。
問題はこの緊急事態宣言下において実施される「緊急事態措置」の中身ですが、すでに報道されている通り、具体的措置として定められているのは、「飲食店(飲食店営業許可を受けている遊興施設等を含む)について、1月8日の0時~2月7日の24時迄、営業時間を5時~20時迄(酒類の提供は11時~19時迄)に制限する」という「飲食店営業時間短縮」のただ一つだけです(参考)
政府はこのほかに、①遊興施設の営業協力短縮の協力依頼、イベントの人数上限5000人、収容率50%以下の協力依頼(参考)、②夜間の外出自粛の要請、③テレワークの推進、を掲げていますが(参考)、これらはいずれも「緊急事態措置」ではなく、法的根拠の無い単なる「協力依頼」という事になります。
ここで、政府が今回の緊急事態措置を「飲食店の営業時間短縮」ただ一つとした(ただ一つで良いと考えた)根拠は、12月23日の政府分科会が「歓楽街や飲食を介しての感染が感染拡大の原因」と特定したこと(「現在直面する3つの課題 新型コロナウイルス感染症対策分科会 令和2年12月23日」7ページ=図1)であると思われます。

図1
その妥当性は後程論じますが、すくなくともこれは政府が10月1日から開始した「Go To イート」、さらには歓楽街や飲食への人流を誘導した「Go To トラベル」(7月22日開始。東京は10月1日から)が現在の感染拡大の主要因だったことを示しており、多くの批判にも関わらず感染が鎮静化しないうちに「Go To キャンペーン」を開始し、感染の拡大が明らかになってなお「Go To キャンペーン」を12月28日まで停止しなかった(東京を目的地とする旅行は12月18日まで)政府の責任は重く、猛省が求められると思います。