コロナ感染拡大で今年前半の解散は無理。前例のない状況での選挙戦を占う
2021年01月12日
新型コロナウイルスに翻弄された2020年が終わり、2021年がはじまりました。新年早々、緊急事態宣言が発令されるなど、今年ものっけからコロナに振り回されています。これだけ先の見通しが立たない不安な年明けはあまり記憶にありません。
そんな不透明な状況でも確実に言えることは、今年中に衆議院議員総選挙は必ずあるということです。任期満了を今年10月21日に控え、各党ともコロナ禍での選挙準備を進めています。
ただ、昨年来のコロナ禍のもと、地元回りが十分できなかったり、定期的な会合を開けずに支持者と話をする機会が減ったり、選挙の様相は様変わりしています。また、政治資金パーティーもなかなか開けず、資金的に厳しい事情を抱える議員も少なくないと聞きます。そもそも感染症拡大という未曾有の状況の中で、衆議院の解散・総選挙はいつ行われ、どのような動きになるのか、大胆に予想してみようと思います。
まず総選挙の時期ですが、これは秋にほぼ決まりだと思います。
確かに、安倍晋三前首相は「選挙は不要不急にはあたらない」と述べ、昨年は幾つかの地方選が行われましたが、いずれも任期満了を理由とする選挙でした。一方、衆議院の解散・総選挙は総理の専権事項です。言い換えれば、解散という行為の責任は総理にのみあると言えます。その菅総理が記者会見で、選挙時期について「今年秋に」と発言したことなどや、別の民放番組で「一番大事なのはコロナの問題で、完全に拡大防止てきでないと(解散は)やるべきでない」と発言したことからも、永田町関係者は秋の選挙をほぼ確信しています。
確かに、いま新型コロナの感染拡大がこれだけ急速に広がる状況からすれば、春先に総選挙を行えるまで感染が収束する可能性は低いでしょう。感染がいまだ収束しない中での解散は、政治空白を1カ月以上つくること、選挙戦で少なからぬ人流を生み出すことに世論が批判を強めることが容易に想像されることから、総理がこれを断行するハードルは、これまで以上に高いと言わざるを得ません。春の解散は見送るというのが妥当だと思います。
春に見送った場合、いつになるかですが、夏は与党・公明党が重視する東京都議選があるのにくわえ、東京五輪・パラリンピックも開催される予定で、衆院選を解散して総選挙を行う時間的・物理的な余裕は、とうていありません。
そうこうするうちに衆議院の任期が着々と迫り、結局、任期満了直前の秋に総選挙となる蓋然性が高いと思います。
では、具体的な選挙のスケジュールはどうなるかを、次に見てみましょう。
前述したように衆院議員の任期は10月21日ですから、任期の空白を生まない最も遅い総選挙のスケジュールは、10月5日(火曜)公示・10月17日(日曜)投開票になります。これより遅い日程は、原則として考えられません。
これより早いスケジュールの場合、自民党総裁選と東京五輪の影響を考慮する必要があります。
まず自民党総裁選ですが、総裁公選規程第8条第4項において、「議員投票の投票日は、総裁の任期満了日前十日以内とする。」と定められています。また、同条第3項では、「総裁選挙の告示は、党所属国会議員の投票(以下「議員投票」という)の投票日の十二日前までにしなければならない。」と定められています。
菅義偉首相の自民党総裁としての任期は、安倍前総裁の任期だった9月末なので、自民党総裁を選ぶ議員投票は9月20日(月曜)から30日(木曜)までに行われなくてはならず、公示は9月8日(水曜)から9月18日(土曜)までの間になります。
新総裁を決めてから総選挙をするとなると、新総裁の写真撮影やキャッチフレーズづくりに数日を要するので、最も遅いパターンから1週間前倒し(9月28日(火曜)公示・10月10日(日曜)投開票)することさえ、難しくなるでしょう。
衆院議員の任期満了による総選挙の日程は、中央選管が遅くとも晩夏には決めますが、この日程の場合、衆院解散のために国会を召集する必要はありません。ただし、新総裁を新総理にして戦うのであれば、内閣総辞職、臨時国会召集、首班指名手続が必要です。とはいえ、こうした選挙管理内閣に意味があるのか、スケジュールがタイト過ぎ、選挙目的の組閣への世論の批判も想定されることから、現実的には、秋の総裁選後の総選挙はあり得ないと考えています。
とすれば、解散・総選挙の時期は8月下旬から9月中旬にかけてとなります。2005年の郵政解散・総選挙と似た時期の選挙になる公算が大きいでしょう。
なお、自民党がどの総裁のもとで衆院選を戦うのか、また現総裁の菅総理が2期目を目指す場合のプランについては、総裁選の解説を含め長くなるので、別の機会に論じたいと思います。
コロナの影響は選挙戦にも影を落とし、衆院選でもこれまでといくつか様相が異なる傾向がみられるでしょう。
第一に、いわゆる“地上戦”が展開できないことが挙げられます。感染拡大防止の観点から、これまで当然のように行われてきた戸別訪問や座談会といった地上戦の実施が難しくなり、それにかわる選挙のやり方を考える必要があります。
第二に、
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