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「ワクチン外交」と地政学

塩原俊彦 高知大学准教授

覇権争奪のための情報戦争

 しかし、ウクライナ国内では、ロシア側による情報戦が仕掛けられている。親ロシア派のテレビ局などは、ウクライナのゼレンスキー大統領を、「敵から薬をもらうことを頑なに拒んだ結果、ウクライナ人を死なせてしまった」と非難しているのだ。

 さらに、ウクライナ東部のハリコフを拠点とするバイオレックが2020年12月30日、ウクライナ保健省と同省国家専門家センターにスプートニクVの医薬品登録申請を行ったことが大々的に報道され、政府に対応を求める動きもある。加えて、ロシア側(ロシア直接投資基金)は昨年12月、アストラゼネカ・オックスフォード大学製ワクチンとスプートニクVとの混合ワクチンの試験を行うと発表し、ウクライナでの試験も準備しているとされる。

 ロシア側は、アストラゼネカ・オックスフォード製ワクチンと組んだ実験が可能となるほど国際的に信用度が高まりつつあるスプートニクVの承認申請をウクライナ政府が拒絶すれば、「国民の命を軽視している」との政府批判を巻き起こしてゼレンスキー政権を揺さぶることができると、もくろんでいるようにみえる。なお、スプートニクVの評判については、「ニューヨーク・タイムズ電子版」(2021年1月8日付)に掲載され

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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