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気候変動対策に積極的なバイデン政権と中国がそれでも協力できないワケ

当面は協調姿勢をとっても具体的な協力関係の進展は至難なアメリカと中国の関係

関山健 京都大学 大学院総合生存学館准教授

 バイデン政権でも対立は絶えないと予想される米中関係にあって、気候変動対策は数少ない協力可能な分野として期待されている。バイデン大統領は、就任100日以内に二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスの主要排出国による首脳会合を招集して、国別削減目標の強化を働きかけると公約している。当然、中国にも協力を求めるだろう。

 一方、かつて温室効果ガスの排出削減義務を拒否し続けた中国も、2060年までのカーボン・ニュートラルを目指すと習近平国家主席が国連総会ビデオ演説で表明したとおり、いまや気候変動対策と気候レジーム外交を積極的に行う立場である。

 では、はたして米中は気候変動対策で協力していけるのだろうか?

 結論から言えば、米中は気候変動対策を巡ってすら協力関係を維持することは容易でないと筆者は見ている。バイデン政権初期には、首脳合意や協力枠組み再開など表面的な協調姿勢が見られるかもしれないが、1年、2年が経って協力の具体化に話が進むと、互いに相手へ切れるカードはあまりなさそうだからだ。

 本稿では、気候レジームにおける米中関係を簡単に振り返り、両国の立場の変遷とその背景を確認する。そのうえで、今後の米中関係を気候変動対策協力という視点から展望してみたい。

拡大次期米大統領のジョー・バイデン氏=ランハム裕子撮影

気候レジームの歴史と米中関係

 気候レジームの歴史を米中関係の視点から振り返ると、おおよそ(1)1990年代、(2)2000年代、(3)2010年代と約10年単位の時代区分で変遷してきた(図表1参照)。

 まず、1991年の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)交渉開始から1997年の京都議定書の採択に至るまで、気候レジーム最初の約10年は、先進国の温室効果ガス排出削減が交渉の主な焦点であった。そのため、この頃の気候レジーム交渉は、主導国たるドイツ、イギリス、オランダなどの欧州諸国と拒否国たる米国との対立が軸であり、中国をはじめとする途上国は、排出削減義務を課されぬよう団結して火の粉を払うという構図で展開された。

 次に、京都議定書の締結から2009年の第15回UNFCCC締約国会議(COP)までが、米中関係を中心に気候レジームを振り返った場合の第2フェーズと言えよう。京都議定書によって先進国の排出義務が決まると、気候レジーム交渉の焦点は途上国の温室効果ガス排出削減に移り、先進国と途上国の間の対立が先鋭化するようになった。なかでも、米中の対立は先鋭化した。これがこのフェーズの大きな特徴である。

 その後、気候レジームにおける米中関係は、COP15コペンハーゲン会議を境に第3フェーズに入った。米中間で気候変動対策の協力が進むようになったのである。

◇図表1 気候レジームにおける米中関係の変遷

拡大(出所)関山(2021)「米中気候変動の行方」JCER2020年度アジア研究報告書(forthcoming)

 とりわけ気候レジームの構造を大きく転換するエポックメーキングな分岐点となったのが、2014年11月の「気候変動とクリーンエネルギー協力に関する米中共同声明」である。なぜ、この米中共同声明がエポックメーキングだったのか。

 それまで米国と中国は、お互いに相手こそ先に排出削減に取り組むべきだと言いながら自分は排出削減を拒むという、いわばチキンレースをしていた。しかし、この米中共同声明は、米国と中国が共に排出を削減させると初めて表明した点で、そのチキンレースに終止符を打つものであった。こうして米国と中国が気候変動対策に共に取り組む立場となったことで、気候レジーム交渉の最大の障害は取り除かれ、2015年のパリ合意へとつながっていったのである。

 それにしても、気候変動問題に対する米中の態度は、なぜこのように変遷してきたのでだろうか。

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筆者

関山健

関山健(せきやま・たかし) 京都大学 大学院総合生存学館准教授

財務省、外務省で政策実務を経験した後、日本、米国、中国の大学院で学び、公益財団等の勤務を経て、2019年4月より現職。博士(国際協力学)、 博士(国際政治学)。主な研究分野は国際政治経済学、国際環境政治学。

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