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プラットフォーマー規制をめぐる欧州でのロビイストの暗躍

日本にとっての教訓は?

塩原俊彦 高知大学准教授

DMA案のもたらす規制

 DMA案の規制対象は主としてゲートキーパー・オンライン・プラットフォームだ。ゲートキーパープラットフォームは、重要なデジタルサービスの企業と消費者の間の関係をゲートキーパー(門番)のようにして結びつける機能を果たしている。これらのサービスのなかには、DSAの対象となるものもある。

 デジタル化の加速で、重要なエコシステムを少数の大規模プラットフォームが支配する状況が生まれている。だが、彼ら独自のルールは、これらのプラットフォームを利用する企業にとっては不公平な条件となり、消費者にとっては選択肢が少なくなるケースが目立つようになっているため、DMAで規制しようというのだ。その主たる規制対象がコア・プラットフォーム・サービスのプロバイダーとして指定されたゲートキーパーだ。

拡大quka / Shutterstock.com

 DMA案では、「公正な商業環境を保護し、デジタルセクターの競争力を守るためには、ゲートキーパーによる不公正な行為に関する懸念を関連する行政機関やその他の公的機関に提起するビジネスユーザーの権利を保護することが重要である」として、たとえばビジネスユーザーとゲートキーパーとの契約書やその他の書面による守秘義務条項などで、「懸念を表明したり、利用可能な救済を求める可能性を何らかの形で阻害するような行為は禁止されるべきである」と規定されている。

 ほかにも、ゲートキーパーがソフトウェアアプリケーションの配布のために設定したルールが特定の状況下で、第三者のソフトウェアアプリケーションなどのエンドユーザーによる利用を制限したり、また、ゲートキーパーのコア・プラットフォーム・サービスの外でこれらのソフトウェアアプリケーションなどへのエンドユーザーによるアクセスを制限したりすることがあるとのべたうえで、このような制限は「不公平である」として、「禁止すべきである」としている。

 加えて、ゲートキーパーの規模が拡大し、ビジネスユーザーやエンドユーザーのゲートキーパーの提供するコア・プラットフォーム・サービスへの経済依存が強化される場合、ユーザー側への救済措置として、「事業またはその一部の売却を含む、法的、機能的、構造的分離などの構造的救済」をとることができるとされている。

 罰金については、26条で、「欧州委員会は、ゲートキーパーが故意または過失により法令を遵守していないと判断した場合、ゲートキーパーに対し、前会計年度の総売上高の10%を超えない範囲で罰金を科すことができる」と定められている。


筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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