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なぜ日本人が「トランプ的なもの」に憧れるのか

トランプ現象と日本イデオロギーの終焉

仲正昌樹 金沢大学法学類教授

右も左も「アメリカ」とうまく距離をとれなかった

 1980年代末に冷戦構造が崩壊するまでは、加藤典洋が『敗戦後論』(1997)で指摘したように、「右」は安保・経済政策的には親米だが、アメリカの作った憲法の改正、戦後レジームの修正の必要性を訴え、「左」は安保・経済政策的には反米だが、(革命を志向する新左翼を除いて)九条護憲、戦後民主主義の継承を共通の旗印にする、というねじれた関係にあった。双方とも、「アメリカ」とうまく距離を取ることができなかったわけである。

 しかし、90年代の終わりから21世紀にかけて、反米保守が台頭し、安全保障面を含めたアメリカからの真の独立と、反グローバリズムを掲げるようになった。左の側でも、経済的なグローバリズムの弊害や旧植民地諸国に対する西側諸国の文化的支配(ポストコロニアルな状況)を糾弾し、国民や民族ごとの自立的発展を重視する、反グローバリズム派が台頭した。右と左の反米ラディカリズムが結果的に接近しているように見えた。こうした混沌とした状況が生じたのは、敗戦から50年以上経ったことと、冷戦に〝勝利〟したものの、国家としてのアメリカの力が相対的に弱まっていく中で、日本の戦後政治が「アメリカ」によって支えられているという意識が、左右双方にとって次第に希薄になってきたためだと考えることができる。

 ところが、日本のトランプ支持派は、反グローバリズムを掲げながら、そのゴールの実現を、アメリカの大統領であるトランプ氏に託そうと

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筆者

仲正昌樹

仲正昌樹(なかまさ・まさき) 金沢大学法学類教授

1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。専門は法哲学、政治思想史、ドイツ文学。著書、訳書多数。最近の主な著作に『人はなぜ「自由」から逃走するのか エーリヒ・フロムとともに考える』『現代哲学の最前線』『フーコー〈性の歴史〉入門講義』などがある。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです