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菅義偉政権はもつのか? 世論とズレる政策、自民党の劣化、カギを握る五輪

止まらぬ支持率の低下。与野党から政権維持を危ぶむ声。「4月危機」はあるか?……

星浩 政治ジャーナリスト

首相の体質・資質を示した日本学術会議問題

 しかし、菅首相を取り巻く状況は甘くなかった。

 政権発足直後に、菅首相が日本学術会議の会員候補6人に対して任命を拒否していたことが判明。警察出身の杉田和博官房副長官が作成した「拒否リスト」を、菅氏がそのまま受け入れていた。

 菅氏は「学術会議のメンバーは公務員だから、首相に人事権がある」という論理を押し通し、「首相の人事権乱用」「学問の自由侵害につながりかねない」といった批判には正面から答えない。「強権体質」の一面が表れたことにくわえ、国民の不安に対して十分説明しきれない菅首相の資質の一端があらわになった。

 7年8カ月の官房長官時代、菅氏は官邸に集中した人事権を行使して、霞が関の官僚たちににらみを利かせてきた。「政権の政策に従えない官僚は異動してもらう」とも公言。菅氏にとって政治家の言葉とは、政策について考え方の異なる官僚を説得するためのものではなく、問答無用の指示・命令のためのものだった。

拡大首相との会談を終え、記者の質問に応じる日本学術会議の梶田隆章会長=2020年10月16日、首相官邸

コロナ禍での言動で際立つ国民とのズレ

 そうした体質はコロナ対応でも露呈した。10月、11月と感染者が急増。政府の分科会の専門家が「Go To トラベル」などの停止を訴えたにもかかわらず、菅首相は「飲食の営業時間を短縮すれば感染拡大は防げる」との考えから、「Go To トラベル」などを継続した。

 そこに決定的な出来事が重なる。菅首相が国民に対して夜の会食を自粛するよう呼びかけていたさなかの12月14日夜、二階俊博自民党幹事長やタレントらが東京・銀座の高級ステーキ店で開いていた忘年会に菅首相が参加、約40分間、飲食をともにしたのだ。

 これがネット上などで厳しい批判を受けた。菅氏本人は「反省」を表明し、年末から会食を控えた。しかし、世論調査の支持率は急落。政権にとって大きな痛手となった。

 多くの国民は感染への恐怖を抱きながら、収入の減少に悩まされている。そうした状況下での菅首相の言動は、国民との意識のズレを際立たせるものだった。

国民への発信が不足、政策もちぐはぐ

 菅首相は官邸での記者会見も少なく、国民への発信不足も目立った。感染症への対策はワクチンが普及するまでの間、マスク着用や手洗いなどを励行しつつ、人と人との接触を極力減らしていくしかない。国民にそうした基本姿勢を分かりやすく、丁寧に説明する。菅首相にはそうした基本的な作業が不足しており、それが国民との意識のズレをさらに拡大していった。

 政策のズレも深刻だ。通常国会の提出された2020度の第3次補正予算案(総額約19兆円)には、1兆円の「Go To トラベル」予算が計上されている。年末年始には「Go To トラベル」が全国で停止され、緊急事態宣言を受けて停止措置は2月7日まで延長されているのに、大盤振る舞いの予算措置は続いているのである。

拡大「Go To トラベル」一時停止。浅草・仲見世通りの店頭には、観光支援策ポスターが貼られたままになっていた=2020年12月28日、東京都台東区

 感染拡大に伴う病床ひっ迫に対応するために、コロナ向けの病床を新設した場合、一床あたり約2000万円を補助する制度もスタートさせる。だが、民間病院にとっては多額の補助金を受け取っても院内感染が発生すれば、病院経営が厳しくなるという事情がある。厚生労働省と、自治体、民間病院とが連携して患者の受け入れ態勢を整備することが急務なのだが、菅首相のリーダーシップは発揮されていない。

 飲食店の営業時間短縮に伴う給付金についても、1日あたり一律6万円という制度には不満が多く、店の規模に応じて増額すべきだという要望が出ているが、政府の対応は鈍い。

 危機意識や政策をめぐり、政権と国民との間にズレが生じることはしばしばある。だが、多くの場合、政権与党が国民のニーズを吸い上げて、そのズレを埋める作業を進めてきた。今回のコロナ危機では、自民党がそういう役割を果たせていないことが、危機をさらに深めているといっていいだろう。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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