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沖縄戦の遺骨眠る土まで頼る辺野古沖埋め立て 菅内閣3つの欺瞞

県民に届く言葉なしに、本島南部の土を一粒も使うべきでない

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大(左)岩の割れ目にあった遺骨=2005年、沖縄本島南部 (右)埋め立てが進む辺野古沖=2020年、沖縄県名護市 いずれも朝日新聞社

 米軍基地の造成に、かつての米国との激戦地であり、今も日本の民間人や兵士の骨が残る土が使われかねない。矛盾に満ちた動きを日本政府がさらす現場は、またも沖縄だ。

 菅義偉内閣の欺瞞を大きく三つ指摘する。

沖縄の二筋の苦難絡める

 米軍基地の造成とは、日本政府が沖縄県の本島中部にある米軍普天間飛行場(宜野湾市)は危険だとして、北部に移そうと進めている辺野古沖(名護市)での滑走路建設のことだ。県は、沖縄に集中する在日米軍基地を、県内でたらい回しにするものだとして反対している。

 かつての米国との激戦地とは、太平洋戦争末期に日本で住民を巻き込んだ唯一の地上戦があった沖縄本島、とりわけ日本兵と住民が追い込まれた南部(糸満市など)のことだ。沖縄戦では、県によると20万人以上が亡くなり、うち県民は9万4千人、日本軍関係者は9万4千人(県外出身6万6千人)、米軍関係者は1万2千人とみられる。

 沖縄をめぐるこの二筋の苦難を昨年4月、日本政府はわざわざ絡めてしまった。普天間移設工事で辺野古沖の海底に軟弱地盤が見つかったとして、地元自治体として埋め立ての可否を判断する沖縄県に対し、設計変更の承認申請書を提出した。当時の安倍内閣で辺野古沖への移設を推し進めた官房長官は菅義偉氏、防衛相は河野太郎氏だった。

拡大安倍内閣当時に記者会見する菅官房長官(左)、河野防衛相(右)

 防衛省沖縄防衛局長名での申請書は、ちょうど後継の菅内閣が発足した昨年9月から閲覧が可能になり、軟弱地盤対策にとどまらない変更点が明らかになった。そこに含まれていたのが、埋め立て用土砂である「岩ズリ」(岩石の破砕でできる細かい石)の調達先の候補として、沖縄本島の「南部地区(糸満市、八重瀬町)」を加えるという内容だった。

 沖縄本島南部では、かつて激戦地となった糸満市を中心に、約3100haが日本唯一の戦跡国定公園に指定されている。戦没者を弔う「平和の礎」や「ひめゆりの塔」などがあり、今も遺骨や不発弾が見つかる。公園内は自然公園法により開発を規制されているが、大半は県への届け出で済む「普通地域」にあたり、畑や住宅地が広がる一方で採石場も点在する。

拡大沖縄戦跡公園の自然公園法に基づく区分図。大半を占める青線で囲まれた部分が「普通地域」=沖縄県のサイトより

 それでもなぜわざわざ、沖縄県が反対する米軍基地造成に、戦没者の遺骨が取り上げ切れていない本島南部の土を使おうとするのか。昨年秋以来、遺族や遺骨収集ボランティアが批判の声を上げ、地元各メディアが報じてきた。朝日新聞那覇総局の記者は最近の本島南部の状況について、このように伝えている。

 朝日新聞デジタル 1月30日公開記事 「ある日ガマが鉱山に 遺骨混じりの土を辺野古工事に?」

 国会でも政府の姿勢がただされてきた。そうした議論と防衛省などへの私の取材からは、菅内閣の三つの欺瞞が浮かび上がる。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

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