有権者が文字どおり日本の進路を考え、議論し、決める機会を逃すな
2021年02月02日
2021年は、第49回衆議院選挙(総選挙)の年である。第48回総選挙が行われた2017年10月22日から衆議院議員の任期満了となる4年を迎えるからだ。菅義偉首相が衆議院を解散するか否かにかかわらず、総選挙が必ず行われる。
第49回総選挙では、大きく二つの争点が主要政党側から提示される見通しだ。一つは従来と同様の受動的な争点、もう一つは主要政党側が形成してきた能動的な争点である。これまでの国政選挙では、メディアから主要政党に対して「争点なき選挙」としばしば批判されてきたが、少なくともその批判はこの総選挙で的外れとなる。
あらゆる国政選挙で争点となるのは、時の政府与党の政治手法に対する是非である。この争点は、総選挙でも参議院選挙でも補欠選挙でも同じである。国政選挙である限り、そのときの政府与党に対する信が問われる。
来たるべき第49回総選挙でまず問われるのは、現在の政府与党である自民党・公明党の連立政権の政治手法の是非である。ここでいう政治手法とは、アベノマスクやGoToキャンペーンなどの新型コロナウイルスに対する政府の対処から、桜を見る会の安倍晋三前首相の虚偽答弁、日本学術会議の任命拒否問題、吉川貴盛元農林水産大臣の収賄疑惑、河井克行・案里夫妻による公職選挙法違反事件などに至るまで、安倍・菅政権の実績である。
自民・公明政権による政権運営について、問題なしと考える有権者は自民党・公明党に投票し、反省すべき点があると考える有権者は両党以外に投票する。第一の争点では、こうした投票行動が求められる。
その結果、両党の議席が現有より増えればこれまでの政治手法を継続すべし、減少すれば政治手法を見直すべしと、有権者が判断したと見なされる。前者の結果となれば「みそぎが済んだ」として、これまでの政治手法がより拡大され、後者の結果となれば「お灸がすえられた」として、両党がこれまでの政治手法を見直すことになるだろう。それは、結果的に両党が衆議院の過半数を占め、与党になったとしても同じである。現有議席からどれだけ増減するかがポイントになる。
政治手法の是非が争われた結果、自民党に激震が走ったことはしばしばある。典型的な例は、森喜朗首相のときの第42回総選挙(2000年6月25日)である。
小渕恵三首相の急逝に伴い、密室協議で首相になったと批判された森首相は、党内外から厳しい批判を浴び、この総選挙で271議席から過半数割れの233議席へと38議席を減らした。この選挙は、森首相の失言から「神の国解散」とも呼ばれた。その後、森首相は数回にわたる内閣改造で挽回を試みるも、内閣支持率が9%(朝日新聞)まで落ち込み、総選挙から10カ月後の翌年4月に総辞職へ追い込まれた。けれども、自民党政権が倒れたわけでなく、小泉純一郎政権に引き継がれた。有権者から「お灸がすえられた」わけである。
ただし、これは重要な争点だが、これだけならば、メディアは「争点なき選挙」と批判しがちである。特別な争点でなく、すべての国政選挙に付随する、あまりにも当然すぎる争点だからだ。
主要政党側から能動的に示される争点は、国家方針の選択である。それも、細かく見ると分かる違いでなく、基盤とする政治・経済思想の違いに由来する大きな違いである。目指す社会像も大きく異なる。
争点の選択肢は、政党ブロック単位で示される。政党ブロックとは、複数の政党が形成する政党連合で、典型例は自民党と公明党で構成する与党ブロックである。政権を獲得したときには、国会での首相指名選挙で協力し、大臣を共に出す閣内協力、大臣を出さない与党による閣外協力、予算や重要法案などで与党に同調する部分協力など、強固なブロックから緩やかなブロックまで、いくつかの協力パターンがある。
現在のブロックは、自民党を中心とする与党ブロック、立憲民主党を中心とする野党ブロックの二つに大きく分かれている。なお、日本維新の会については、選挙では与野党双方のブロックに対立的でありつつも、国会運営や重要法案などで与党ブロックに同調的であるため、政府与党に部分協力する政党と考えられる。
これらの政党ブロックが、もっぱら選挙事情でなく、国家方針をめぐって形成されるようになったことが、第48回総選挙までと大きく異なる。自民・公明の与党ブロックは、
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