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「現在の延長線上にある未来」か「もう一つの未来」か――総選挙の最大争点は国家方針の選択だ

有権者が文字どおり日本の進路を考え、議論し、決める機会を逃すな

田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授

 2021年は、第49回衆議院選挙(総選挙)の年である。第48回総選挙が行われた2017年10月22日から衆議院議員の任期満了となる4年を迎えるからだ。菅義偉首相が衆議院を解散するか否かにかかわらず、総選挙が必ず行われる。

 第49回総選挙では、大きく二つの争点が主要政党側から提示される見通しだ。一つは従来と同様の受動的な争点、もう一つは主要政党側が形成してきた能動的な争点である。これまでの国政選挙では、メディアから主要政党に対して「争点なき選挙」としばしば批判されてきたが、少なくともその批判はこの総選挙で的外れとなる。

第一の争点は自民・公明連立政権の政治手法

 あらゆる国政選挙で争点となるのは、時の政府与党の政治手法に対する是非である。この争点は、総選挙でも参議院選挙でも補欠選挙でも同じである。国政選挙である限り、そのときの政府与党に対する信が問われる。

 来たるべき第49回総選挙でまず問われるのは、現在の政府与党である自民党・公明党の連立政権の政治手法の是非である。ここでいう政治手法とは、アベノマスクやGoToキャンペーンなどの新型コロナウイルスに対する政府の対処から、桜を見る会の安倍晋三前首相の虚偽答弁、日本学術会議の任命拒否問題、吉川貴盛元農林水産大臣の収賄疑惑、河井克行・案里夫妻による公職選挙法違反事件などに至るまで、安倍・菅政権の実績である。

 自民・公明政権による政権運営について、問題なしと考える有権者は自民党・公明党に投票し、反省すべき点があると考える有権者は両党以外に投票する。第一の争点では、こうした投票行動が求められる。

 その結果、両党の議席が現有より増えればこれまでの政治手法を継続すべし、減少すれば政治手法を見直すべしと、有権者が判断したと見なされる。前者の結果となれば「みそぎが済んだ」として、これまでの政治手法がより拡大され、後者の結果となれば「お灸がすえられた」として、両党がこれまでの政治手法を見直すことになるだろう。それは、結果的に両党が衆議院の過半数を占め、与党になったとしても同じである。現有議席からどれだけ増減するかがポイントになる。

 政治手法の是非が争われた結果、自民党に激震が走ったことはしばしばある。典型的な例は、森喜朗首相のときの第42回総選挙(2000年6月25日)である。

 小渕恵三首相の急逝に伴い、密室協議で首相になったと批判された森首相は、党内外から厳しい批判を浴び、この総選挙で271議席から過半数割れの233議席へと38議席を減らした。この選挙は、森首相の失言から「神の国解散」とも呼ばれた。その後、森首相は数回にわたる内閣改造で挽回を試みるも、内閣支持率が9%(朝日新聞)まで落ち込み、総選挙から10カ月後の翌年4月に総辞職へ追い込まれた。けれども、自民党政権が倒れたわけでなく、小泉純一郎政権に引き継がれた。有権者から「お灸がすえられた」わけである。

 ただし、これは重要な争点だが、これだけならば、メディアは「争点なき選挙」と批判しがちである。特別な争点でなく、すべての国政選挙に付随する、あまりにも当然すぎる争点だからだ。

拡大2000年総選挙で多くの議席を失い、厳しい表情でテレビの速報を見る自民党の森喜朗総裁=2000年6月25日、東京・永田町
拡大前回衆院選で勝利し笑顔でインタビューにこたえる自民党の安倍晋三総裁=2017年10月22日、東京・永田町

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筆者

田中信一郎

田中信一郎(たなか・しんいちろう) 千葉商科大学基盤教育機構准教授

博士(政治学)。国会議員政策担当秘書、明治大学政治経済学部専任助手、横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、内閣官房国家戦略室上席政策調査員、長野県企画振興部総合政策課・環境部環境エネルギー課企画幹、自然エネルギー財団特任研究員等を経て、現在に至る。著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』『信州はエネルギーシフトする』、共著に『国民のためのエネルギー原論』『再生可能エネルギー開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック』などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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