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ウォールストリートで起きている「デブ猫」退治

「ゲームストップ騒動」を読み解く

塩原俊彦 高知大学准教授

 ウォールストリートで起きた、ゲーム機やコンピューターゲーム、家電製品などの小売業者、ゲームストップ株の乱高下や、その株式購入に個人投資家が使った株取引プラットフォームのロビンフッド・マーケッツなどの混乱について、多くの読者は理解に苦しんでいるのではないか。

 そこで、その昔、日本経済新聞社の証券部に在籍したことのある筆者が米国で何が起きているのかを解説してみよう。なお、この際参考にしているのは、「ゲームストップ:レディット・ハムスターがウォール街のデブ猫に反発した話」というロシア語で書かれた記事である。

 簡単に言えば、大金持ちである「デブ猫」を懲らしめるための個人投資家たる「ハムスター」による反乱がある程度、成功するという事件が起きたと言える。その背後には、パンデミック対策で世界中の国々が大量のヘリコプターマネーをばら撒き、その過剰資金が株式相場にもあふれ、カジノ資本主義が活況を呈してることへの厳しい警告がある(ヘリコプターマネーについては拙稿「新型コロナ対策 日本の喫緊の課題は「ヘリコプターマネー」導入か」を参照)。

対立の構図

拡大David Tran Photo / Shutterstock.com

 まず、今回の出来事の対立の構図をしっかりと押さえなければならない。悪役は明らかに「ヘッジファンド」と、そこに巨額の資金を預けて利益をあげようとしてきた大金持ちである。

 ヘッジファンドは金融派生商品(デリバティブ)など複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとするものだ。株式の空売りもできる。ただし、ハイリスク・ハイリターンであるため、規制当局は一般ユーザーへの投資勧誘を禁止しており、ヘッジファンドと組めるのは「適格投資家」、すなわち、事実上、「大金持ち」だけだ。

 ヘッジファンドやその投資家は、資金力にものを言わせて、空売りなどで巨額の利益をあげてきた。米国のSNSのレディット(Reddit)には、株式・オプション取引を議論するための場として「サブレディット」と呼ばれる仕組みがあり、そのなかのWallStreetBetsフォーラムに多くの参加者が集い、彼らの多くは、こうした金持ちを「デブ猫」と呼んで蔑んできた。

 この参加者数は2021年1月で750万人を超えた。彼らの多くは米国、カナダ、オーストラリアに住む「オタク」であると考えられている。いわば、「ハムスター」のようなちっぽけな個人投資家が「デブ猫」の横暴に挑んだのが今回の事件であると言えるだろう。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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