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バイデン政権下の覇権争奪を占う:中国は余裕しゃくしゃく

米ロふたつの研究機関の報告書を読み解けば

塩原俊彦 高知大学准教授

 ジョー・バイデン大統領の就任で、世界はどうか変わろうとしているのだろうか。ここでは、ロシアと米国で公表された二つの研究機関の報告書をもとにこの問題を論じてみたい。

 一つは、2020年12月、多数の外交官を輩出しているモスクワ国際関係大学とそのコンサルティング会社がまとめた「国際脅威2021:パンデミック後の地政学」である。もう一つは、ハーバード・ケネディスクール(HKS)とドイツ外交問題評議会(DGAP)が前述の報告書とほぼ同じ時期に作成した「共に強く:大西洋横断権力の活性化のための戦略」だ。

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報告書「国際脅威2021」

 最初に、「国際脅威2021」の内容を紹介してみたい。その明確な予測としては、バイデンは「欧州の同盟国との関係を改善しようとする」と指摘したうえで、「しかし、米国が欧州との関係改善を必要とする理由を忘れてはならない、ロシアと中国をより良く封じ込めるためなのだ」としている。そのうえで、具体的には、「4年間の不確実性の後、欧州の北大西洋条約機構(NATO)同盟国への支援を示したいというワシントンの意向から、ドイツからの一部米軍の撤退決定の撤回、共同演習の数と範囲の増加、欧州への追加的武器供給につながるかもしれない」と指摘されている。

 加えて、「米国での高精度非核兵器(超音速兵器を含む)やミサイル防衛の開発が継続することにともなって、ロシアとの関係における緊張度が高まるだろう」と予想している。なお、米軍のドイツからの撤兵については、2020年6月、ドナルド・トランプ大統領(当時)は駐留米兵3万4500人のうち9500人を撤兵させることを明らかにしていた。

 中国封じ込め政策については、米国には「超党派の強いコンセンサスがある」点が強調されている。短期的には貿易分野での象徴的な前進による緊張緩和の可能性があるとしながらも、台湾との関係強化やアジア太平洋地域での中距離ミサイルの配備計画などを継承するとみている。

 中国についての分析では、習近平総書記が2019年1月の段階で、「ブラックスワン」(黑天鹅)と「灰色サイ」(灰犀牛)の両方の事象に対して高い警戒心をもっていなければならないと発言していたことに注目している。前者は不測事態、後者は無視されてきた既知の脅威・リスクである。「この警戒感は、2021年に入ってからも、経済がパンデミック後の回復に成功しても続くだろう」とみている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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