森会長の交代と大会組織委員会の改組ができなければ、東京五輪は返上すべきだ
2021年02月04日
「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」(TOCOG)の森喜朗会長の「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」などの発言が、国内外で波紋を広げています。女性蔑視とも捉えられる発言に、厳しい目が注がれる一方で、「森氏のいつもの失言」で終わりそうな気配も見られます。
4日の記者会見で森会長は発言を謝罪、撤回すると述べましたが、辞任は否定しました。しかし筆者は、開催の可否が国内外から注目される東京五輪、もっと言えば国際社会における日本の評価に直結するという観点から、森会長のこの発言は看過すべきではないと考えます。以下、詳述します。
問題の発言は、2月3日の「日本オリンピック委員会」(JOC)臨時評議員会のあいさつで飛び出しました。森会長は女性理事を増やすというJOCの方針に対し、個人の意見と断ったうえで、女性が入っている理事会は時間がかかる、女性は競争意識が強くて誰か一人が手を挙げて言うとみんなが発言する、などと述べたのです。
まずもって、こうした森喜朗氏の発言の善悪を、感情論だけで考えるべきではないと私は思います。
そもそもオリンピックに関する規則を定めたオリンピック憲章では、「オリンピズムの根本原則」という項目で、下記のように定めています。
6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会的な出身、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、 いかなる種類の差別も受けることなく、 確実に享受されなければならない。
森氏は、このオリンピック憲章において設置が定められている東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)の会長であり、この組織委員会がオリンピック憲章を遵守しなければならないことは当然です(注)。
(注)
規則35付属細則3 OCOG はその設立から解散に至るまで、 オリンピック憲章および IOC と NOC、 開催地との間で取り交わす合意書、 さらにその他の規則または IOC 理事会の指示に従い、 すべての活動を進めるものとする。
東京五輪の責任者である森会長自らが、オリンピック憲章に反する発言をしたという事実を直視し相応の処分をしなければ、国際社会から理解を得ることは難しいと思います。
森喜朗氏といえば、内閣総理大臣時代にも数々の失言や不祥事で取り上げられたことから、今回の失言に驚く人は少ないかもしれません。
実際、えひめ丸事故の対応など有事の対応の手際の悪さや失言癖は、歴代内閣と比較しても群を抜いており、内閣支持率が最終盤でひと桁(9% 。 2001年2月朝日新聞社調査)まで落ち込んだことも、強く印象に残っています。
そのような人物をTOCOGの会長に就任させ、ここまで会長として担ぎ上げてきた政府の体制にも疑問がありますが、今回の発言にしても本人は、「これはテレビがあるからやりにくいんだが」などと、公になれば問題になるということを理解したうえで確信犯的に発言しており、リーダーシップとしての資質や性格特性的な問題があることは明白です。
組織委員会もさすがにまずいとみたのか、発言翌日(4日)に森会長の記者会見をセット、本人から謝罪と弁明の発言がありました。
ただ、形のうえでは謝罪と発言の撤回に触れたものの、会見中に薄ら笑いを浮かべるシーンもみられたほか、「面白おかしくしたいから聞いているんだろ?」などと逆ギレとも捉えられるような発言をするなど、真意は謝罪にないと思わせるような発言も散見され、本人が自らの意思で行った会見というよりは、世論や組織委員会からの声を受けて仕方なく行った記者会見という印象を強く受けました。
「女性が多いと会議が長い」という発言の根拠について、「わからない」としながらも、「(そういう話は)よく聞きます。」などと付言するなど、自分の発言は正しいが、五輪の精神に反しているという指摘があったので渋々撤回する気持ちがありありで、これですっきりと幕引きとなるとは思えません。
本稿執筆時では海外メディアによる記者会見への反応はまだ入ってきていませんが、今後記者会見の様子が海外でどのように報道されるのかによっては、さらにもう一波乱ありそうです。
コロナ禍に際しても、「私はマスクをつけないで戦う」などとトンチンカンを超越したような発言を繰り返してきた森氏ですが、それでもなお組織委員会会長でいられるのは何故でしょうか。
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