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コロナ禍に乗じてアルジェリア政府がデモを規制、高まる国民の不満

[21]貧困層が35%、憲法改正の国民投票もボイコット

川上泰徳 中東ジャーナリスト

コロナ禍による政府の支援は国民一人80ドル

治安当局と対峙するアルジェの市民たち= 2019年3月19日 BkhStudio/Shutterstock.com拡大治安当局と対峙するアルジェの市民たち= 2019年3月19日 BkhStudio/Shutterstock.com

 政府がとった外出禁止令や集会禁止令はコロナ対策という名目だったが、国民には1992年から2011年まで19年間続いた「テロ対策」としての非常事態令の記憶と重なった。1991年、総選挙でイスラム系政党が圧勝する形勢になった際、軍がクーデターによって選挙を中止してイスラム系政党を非合法化し、翌92年から非常事態宣言を発出した。そしてイスラム過激派と軍の衝突が続いて内戦状態となり、90年代末までに10万人以上の死者を出した。

 しかし、1990年代後半にはイスラム過激派は制圧され、その後、非常事態宣言は「テロ対策」の口実で、政府批判勢力を封じる手段に使われた。ところが、2011年に「アラブの春」が始まり、チュニジア、エジプトで政権が崩壊し、アルジェリアでもデモが始まったため、政府は民主化のポーズをとるために非常事態宣言を解除した。

 政府はコロナ対策で非常事態として強権的な手法をとったが、経済的に大きな犠牲を国民に強いるものであり、かつ、経済支援の不十分さや医療環境の脆弱さが露呈した。

 米ワシントンに拠点を置き貧困問題に取り組むボルゲン・プロジェクトのサイトに「アルジェリアは4200万の人口で集中治療室(ICU)がわずか420床しかない」とする記事が出た。「アルジェリアは石油関連産業から富を得ているが、政府は病院を拡充したり、近代化することにわずかの資金しか配分しなかった。2014年に政府は5つの近代的な大学付属病院を建設する計画を提案したが、実現することはなかった」と書いている。

 さらにコロナ禍による世界的な経済減速で、石油価格が急落したことが、政府の財政状況を悪化させた。世界銀行の資料によると、石油・ガス収入は、輸出の94%、国内総生産(GDP)の19.5%、政府歳入の41%を占める。2020年春の石油価格の下落によって、政府は5月初めに公共支出の50%削減を発表した。国際通貨基金(IMF)は2020年の経済成長率をマイナス5.5%と予測している。

 財源の大幅な減少で、コロナ対策に伴う経済政策としての支援は国民一人80ドル(8500円)にとどまった。5月半ば、外出禁止令の6月中旬までの延期が発表された。アラブ紙「シャルクルアウサト」によれば東部の2都市で中小企業者による営業再開を求めるデモが起こったという。

 デモに参加した家電販売店主は「政府の都市封鎖によってみな破産寸前なのに、政府は我々が求める税金や電気・水道料金の免除をしない。みんな怒っている」と語る。さらに

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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