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初代陸上自衛隊特殊作戦群長による「私的戦闘訓練」の本当の問題点

秘密主義を脱し、「オーナー」である有権者・納税者に積極的情報公開を

堀口英利 キングス・カレッジ・ロンドン社会科学・公共政策学部 戦争学科戦争学専攻

秘密に包まれた部隊、「特殊作戦群」

 荒谷氏は陸上自衛隊在職中に、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学校やアメリカ陸軍特殊部隊(通称:グリーンベレー)への留学を経て、「特殊作戦群」の初代群長に就任した。

 特殊作戦群は習志野駐屯地(千葉県船橋市)に所在し、陸上自衛隊で唯一の特殊部隊とされ、その訓練や装備については一切が秘密に包まれている。

 防衛白書や陸上自衛隊のWebサイトを見ても大した情報が出てくることはなく、せいぜい申し訳程度に群長の人事異動が明かされているくらいだ。これまでも公式に報道で名前が出てきたのは、安倍晋三首相(当時)がオーストラリアのターンブル首相(当時)やヨルダンのアブドゥッラー2世国王とともに視察したときと、沖縄県うるま市沖で墜落したアメリカ陸軍の特殊作戦用ヘリコプターの墜落事故に隊員2名が巻き込まれたときなどに限られているのである。

 つまり、特殊作戦群は防衛省・自衛隊が基本的に一切の情報を明かさず、メディアもほとんど何も知らされていないであろう「秘密部隊」ということだ。

 確かに、従事する長距離偵察・情報収集、人質奪還・救出、テロリズム対処といった任務を考えるに、特殊作戦群は自衛隊の一般部隊に比べて多くの秘密を抱えざるを得ないだろうし、その秘密を明かせば明かすほど、仮想敵国やテロリストを利することになる。だから、特殊作戦群が「秘密主義」に走ることも理解できなくもない。

 しかし、秘密主義は良くも悪くも「何をやっているのか分からない」状況を生む。誤解を恐れずに言えば、秘密部隊が「暴走」しようとしていても、市民やメディア、ともすれば防衛省本省や首相官邸も「気づけない」おそれすらある。そして、これは必ずしも「絵空事」とは言い切れない。

先鋭化しやすい特殊部隊、外国では「最悪の結末」も

ロシア軍特殊部隊スペツナズ=ロシア・イジェフスク拡大ロシア軍特殊部隊スペツナズ=ロシア・イジェフスク

 CNNの報道によると、昨年6月30日にドイツのクランプ=カレンバウアー国防大臣はドイツ陸軍特殊部隊「KSK」の一部部隊の解体を命じたと、地元紙「南ドイツ新聞」の取材に答えたとされる。同年5月には兵士が自宅の家宅捜索を受け、武器や弾薬・爆薬を隠していたことが発覚した。そして、ニューヨーク・タイムズの報道によればKSKから約4万8,000発の銃弾と62kgの爆薬が消えたという。

 これはドイツ陸軍KSKだけに限った問題ではない。BBCやAFP通信の報道によると、昨年11月19日に、オーストラリア国防軍のキャンベル司令官は陸軍特殊部隊「SASR(特殊空挺部隊連隊)」の一部がアフガニスタンで不法に39人を殺害した証拠があると発表した。そのなかには、「ブラッディング」と呼ばれる慣行でSASRの新兵が捕虜の射殺を強要されたケースや、僅か6歳の子供を殺害したりヘリコプター内のスペースを確保するために捕虜を射殺したりといった蛮行も報告されているという。

 そして、このような問題は本邦の同盟国である米国でも報じられている。オサマ・ビン・ラディン殺害作戦を実行したことでも知られるアメリカ海軍特殊部隊「DEVGRU(特殊戦開発グループ)」の隊員らがイラクやアフガニスタンにおいて、敵の遺体を弄んだり、斬首したりする「蛮行」に及んだりしていたと、ニュースサイトの「インターセプト」が明らかにしている。

 もちろん、多くの特殊部隊の兵士は戦争犯罪に加担していないと信じたい。多くのメディアで描かれているように、特殊部隊の兵士を選抜するプロセスにおいては心身ともに厳しい訓練や試験が課されており、そのような関門を突破している人間は残虐な行為に走らないと思いたい。

 しかし、先述の通り、現実には各国で特殊部隊による戦争犯罪が明らかになっている。ドイツ陸軍KSKの場合、防諜機関「軍事保安局(MAD)」の調査対象となる極右過激派の兵士の割合は他の部隊の5倍に上るそうだ。

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筆者

堀口英利

堀口英利(ほりぐち・ひでとし) キングス・カレッジ・ロンドン社会科学・公共政策学部 戦争学科戦争学専攻

1998年3月16日生。日本の大学を中退して単身渡英。2020年より潰瘍性大腸炎との闘病生活を開始。現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大に伴い、国内に滞在しながら衆議院議員事務所とシンクタンクでインターン。【Twitter】https://twitter.com/Hidetoshi_H_ 【Facebook】https://www.facebook.com/horiguchi.hidetoshi/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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