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首相の資質とは何か。向き合う相手は他でもない「国民」だ

民の痛みを感じとれず、原稿棒読み。これでは誰もついていかない

花田吉隆 元防衛大学校教授

拡大組閣を終え、記念撮影のためレッドカーペットが敷かれた階段を下りる菅義偉新首相(前列中央)と閣僚たち=2020年9月16日

「国民の方を向く」~ナンバーワンに不可欠な資質

 有能なナンバーツーは、必ずしも有能なナンバーワンではない。ナンバーツーに特に求められるわけではなく、しかしナンバーワンには欠かすことができない資質とは何か。とりわけ危機にあって、ナンバーワンが備えなければならない必要不可欠な資質とは何か。

 それは、国民の方を向くということだろう。

 ナンバーツーは、永田町の遊泳術を身につけ、霞が関の役人を人事で縛り上げればそれで有能と評される。朝夕、有力者と会食を共にし、そこからさまざまなアイデアを吸い上げ政策にまとめ上げれば政策通の評価を得る。国家観や大局観がなくとも、個別の政策を積み上げれば立派な業績だ。

 しかし、ナンバーワンはそれでは務まらない、就中、危機の時のナンバーワンはそうはいかない。

拡大官邸主導で官僚人事を決める内閣人事局の発足にあたり、看板をかけた、(右から)菅義偉官房長官、安倍晋三首相、稲田朋美内閣人事局担当大臣、 加藤勝信内閣人事局長=2014年5月30日、東京・永田町
拡大「スガ案件」と呼ばれるふるさと納税で、寄付額全国1位となった宮崎県都城市の精肉加工場を視察する菅義偉官房長官。制度は、返礼品競争の拡大で富裕層ほど節税の恩恵が増すなど、趣旨逸脱との批判も根強い=2016年6月15日

危機に命運を託せるリーダーとは

 危機の時、国民はリーダーに命運を託す。命運を託すに足りずと思えば、誰もリーダーの言うことに従おうとはしない。しかし、危機に際し、リーダーは国民を束ねていかなければならない。国民に訴えかけ、その共感を得、国民を一つ方向に束ね、共同して脅威に立ち向かっていかねば国民の命運が損なわれる。

 ナンバーツーの時、如何に政治の「技術」に長けていようと、ナンバーワンになり、政治の最も重要な要素である「国民との接点」に於いてその資質が問われるようなら、それは危機のリーダーとして致命的といわざるを得ない。

 我々は危機に直面した時、どういうリーダーなら我々の命運を託してもいいと思うだろう。

 「国民の痛みを肌で感じ」「しかし、大局的に判断すればこの方向に進むしかなく」「それを国民に分かりやすく説き、国民がそれを納得し、ついていこうという気になる」、そういうリーダーでなければ、我々は、難局に当たって全てを託そうとは思わない。つまり、ナンバーワンは「国民の方を向いて」いなければならない。

拡大高田松原津波復興祈念公園で献花し、黙禱する菅義偉首相ら=2020年12月10日、岩手県陸前高田市
拡大就任後初の出張で福島県を訪れ、東京電力の福島第一原子力発電所構内を視察する菅義偉首相=2020年9月26日


筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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