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プレゼンは直球勝負か変化球か? 民主党政権の「事業仕分け」への対応は…

連載・失敗だらけの役人人生⑦ 元防衛事務次官・黒江哲郎が語る教訓

黒江哲郎 元防衛事務次官

拡大安保法制に関して記者会見する安倍晋三首相=2014年5月、首相官邸。朝日新聞社

2017年まで防衛省で「背広組」トップの事務次官を務めた黒江哲郎さんの回顧録です。防衛問題の論考サイト「市ケ谷台論壇」での連載からの転載で、担当する藤田直央・朝日新聞編集委員の寸評も末尾にあります。

切り口が大事…第三のK

 前回は防衛省での「仕事の仕方」として第一と第二のKを中心に紹介しましたが、今回は第三のK=「共感を得る」ためのプレゼンテーションについて触れます。

 プレゼンに当たっては、「何をどのような切り口で話すか」をよく考えなければなりません。どんな政策にも一丁目一番地の論点、主要な論点があります。政策について理解を得るためには、そうした主要論点をしっかり掘り下げて説明しなければなりません。

 そのため、多くの人が自分の議論を補強するためポンチ絵を使ったり、関連する数字を紹介したりしていることと思います。特に、数字を使うことは、物事のスケール感を理解してもらう上で効果的です。さらに、単に数字を示すだけでなく、その数字を印象付けるための表現をちょっと工夫するだけでグッと効果が上がります。

拡大防衛省のサイト(2021年2月)

 例えば、中国の軍事力建設のペースについて「水上艦艇も潜水艦も毎年2~ 3隻ずつ、最新鋭戦闘機は年に30機ずつ調達している」と紹介するのは事実関係の説明です。これに「自衛隊の場合、艦艇や潜水艦は年に1隻ずつ、第五世代戦闘機は年に数機ずつが精一杯」と付け足すと、中国の増強ペースがいかに速いかを理解してもらいやすくなります。同様に、中国の人口を「約14億人」というのは事実関係ですが、「世界の5人に1人は中国人」と紹介するとスケール感がさらによくわかります。

 また、自衛隊のスクランブルについて「年に1000件を超える」というのは単なる事実関係ですが、「単純平均でも毎日3回は国籍不明機に対応していることになる」と紹介すれば、その頻度を実感しやすくなります。こうしたちょっとした工夫が、インパクトのある説明につながるのです。

 同時に、説明が細部に入り込み過ぎて「木を見て森を見ない」ような議論に迷い込まないよう注意することも大事です。そうなりそうな時には、「そもそも何故この案件を進めなければならないのか」というような切り口を提示して、大局的な議論に立ち戻るように促すことが有益です。

 私はこれを「視点を若千後ろに引いて物事を抽象化して考える」というようなイメージでとらえています。具体例をいくつかあげてみましょう。

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筆者

黒江哲郎

黒江哲郎(くろえ・てつろう) 元防衛事務次官

1958年山形県生まれ。東京大学法学部卒。81年防衛庁に文官の「背広組」として入り、省昇格後に運用企画局長や官房長、防衛政策局長など要職を歴任して2017年退官。現在は三井住友海上火災保険顧問

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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