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新型コロナウイルスが掘り崩した「景気依存」「自己責任」社会の基盤

支え合いの経済政策が日本経済の活路を拓く

田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授

ベーシックサービスで個人消費の潜在力を大きく引き出す

 バブル経済の崩壊後、GDPの6割前後を占める個人消費の弱さが常に経済の課題となってきた。1998年の金融危機や2008年の世界金融危機はもちろんのこと、相対的に景気が好調だった時期でも、個人消費の弱さが問題となってきた。例えば、世界金融危機の前の2007年の『経済財政白書』は、景気分析において「実感の乏しい景気回復」として家計部門への波及の弱さを問題視している。また、2019年の『経済財政白書』は「良好な雇用・所得環境を背景に消費は持ち直しを続けているが、雇用・所得環境の改善に比べると個人消費の伸びは緩やかにとどまっている」との見解を示している。

 これは「国家重視・自己責任」の国家方針に基づき、生活基盤の市場化を促進してきたことの帰結である。生活基盤の市場化が、一部の人々に過大な利益を生む一方、多数の人々の所得を過少にしたからだ。典型例は1999年の法改正によって認められた「派遣労働の自由化」で、パソナに代表される人材派遣業界の成長をもたらした一方、賃金の抑制傾向に拍車をかけることとなった。

 この国家方針に基づく経済政策では、論理的にも現実の結果としても、個人消費の潜在力を引き出せず、経済を安定化することはできない。高所得層の所得をさらに高めても、その分を消費に回すことはほとんどない。一方、低所得層の所得を高めれば、その大半を生活必需品の消費に回す。現在の国家方針は、この限界消費性向の考え方に反する。

 よって、国家方針を「個人重視・支え合い」に転換することは、日本経済の課題からすると喫緊の要請である。公共によって、人々に遍く生活基盤を提供し、実質的な所得を高めることで、個人消費を引き出せる

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筆者

田中信一郎

田中信一郎(たなか・しんいちろう) 千葉商科大学基盤教育機構准教授

博士(政治学)。国会議員政策担当秘書、明治大学政治経済学部専任助手、横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役、内閣府行政刷新会議事務局上席政策調査員、内閣官房国家戦略室上席政策調査員、長野県企画振興部総合政策課・環境部環境エネルギー課企画幹、自然エネルギー財団特任研究員等を経て、現在に至る。著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』『信州はエネルギーシフトする』、共著に『国民のためのエネルギー原論』『再生可能エネルギー開発・運用にかかわる法規と実務ハンドブック』などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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