分散ネットワーク型社会への投資が日本経済の新しいエンジンとなる
社会を持続可能にし、人々の幸せを増進する「グリーン・グッド・ジョブ」へ
田中信一郎 千葉商科大学基盤教育機構准教授
分散ネットワーク型社会への投資が日本経済を牽引する
再生可能エネルギー100%の分散ネットワーク型社会に転換することは、とても割のいい確実な投資である。多くの人々は、再生可能エネルギーや気候変動対策などに対して、負担と考えているだろう。けれども、実際には「ローリスク・ハイリターン」の投資である。
投資収益の直接的な源は、化石燃料の輸入代金と原子力発電のリスク費用である。1990年代、5兆円から8兆円の間で安定的に推移していた日本の化石燃料(石油・石炭・天然ガス)の輸入総額は、21世紀に入って国際石油価格が上昇傾向に転じたことを受け、2008年には27.6兆円にまで達した。国際石油価格は、その後も乱高下しつつ上昇傾向を続けている。2013年、2014年には、再び2008年と同等の輸入額となった。原子力については、2011年の福島原発事故を受けて、安全対策と保険のリスク費用が大幅に上昇し、政府の支援がなければ維持困難になりつつある。
再生可能エネルギーへの投資は、これらのコストを削減し、国内での収益として返ってくる。これを法的に担保したのが、2012年から導入されている固定価格買取制度である。しかも、再生可能エネルギーの導入費用は、固定価格買取制度による普及によって、大幅に低下し、市場競争力を持ちつつある。少なくとも、原子力より安い状態になっている。また、化石燃料の場合、油田やガス田、鉱山を所有している海外の富裕層が収益の多くを最終的に手にする一方、再生可能エネルギーの場合、国内の設置者が収益を手にする。
しかし、現在の政権は、再生可能エネルギーの普及に消極的で、かえって再生可能エネルギー市場の健全な発展を阻害して
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