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カマラ・ハリスが米国大統領になる未来

バイデン・ハリス政権のアメリカ~ハリス副大統領就任が示唆する次世代の米国社会

佐藤由香里 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

大きな注目を浴びるカマラ・ハリス副大統領

 ロン・クレイン米大統領首席補佐官のニューヨーク・タイムズへのコメントが印象的だ。

 「(バイデン)大統領は非常に明快な指示を我々に与えた。そして我々のゴールとは、ハリス副大統領を可能な限り公衆の眼に触れさせることである」

 ジョー・バイデン大統領(78)は現時点で明言を避けている。しかし、自身の1期4年或いは2期8年の任期を満了後、カマラ・ハリス副大統領を後継者とする意思があることをその振る舞いで伺わせる。

拡大大統領就任式で宣誓するカマラ・ハリス氏=2021年1月20日、ワシントン

 バイデン大統領は記者会見等の場で政策について話すとき、主語を”I”ではなく必ず“We”にするが、それは「バイデン・ハリス政権」としての政策実現であることを公に示唆するためである。またホワイト・ハウスのスタッフによれば、ハリス副大統領は毎朝のブリーフィングには必ず同席し(コロナ禍で外出が制限されていることも手伝い)、バイデン大統領と毎日4~5時間程度共に過ごすという。

 ハリス副大統領は、今後コロナ・タスクフォース、人種問題、気候変動など多岐にわたる重要課題のリードを任されるとの見方が強く、今後民主党政権を維持できれば、ハリス副大統領への政権移譲すなわち「初の黒人女性大統領カマラ・ハリス」の可能性も低くはないのだろう。

「多民族民主主義国家が実現する」可能性の高まり

 バイデン大統領は1月20日の就任日から僅か8日間のあいだで少なくとも42もの大統領令や覚書に署名している。殆どは①新型コロナ、②経済対策、③気候変動、④人種問題など、政権発足以前より掲げてきた4大重要政策課題に係る。

 新政権のスローガンには、バイデン氏が選挙中から繰り返し叫び続けてきた「結束(unity)」を掲げ、閣僚人事には”Looks like America”の宣言通り、黒人のロイド・オースティン国防長官をはじめ人種、ジェンダーともに多様な閣僚を指名した(主要閣僚の半数以上は非白人、女性を登用)。

 白人の“エスタブリッシュメント政治家”であるバイデン氏のこうした先進的人事は斬新であり、また多くの米国人にとって「多民族民主主義国家が実現する」可能性の高まりを示唆するものであった。

 未曾有の国難と分断の間に揺れる米国をいかに「結束」出来るのか。多様なスペクトラムの違いを包摂することが出来る統治とは一体どのような姿か。そうした議論は、いま党派に関わらず様々な場所で交わされている。現在大統領令の中でも超党派の支持を得ている政策は人種問題であり、バイデン氏はハリス副大統領を政治パートナーに携え、「結束」への突破口を見出そうとしているのかもしれない。


筆者

佐藤由香里

佐藤由香里(さとう・ゆかり) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

カルフォルニア州立大学で学士号(国際関係論)、ワシントン・セントルイス大学で理学修士号(公衆衛生学・MPH)取得。米国中西部の地域病院プロジェクトマネージャー、在米デンバー総領事館専門調査員(政治・経済・広報文化)など8年間の米国生活を経て2019年7月に帰国。同8月より現職。注力テーマは米国の内政・選挙、公衆衛生、社会問題。国際戦略研究所ウェブサイト『考』に分析レポートを掲載。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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