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トランプ、熱狂支持のフロリダで政治活動再開

共和党は「ポスト・トランプ」時代のアイデンディティークライシス

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

熱狂的地元支持者、「愛国者党の設立を」

拡大1月20日、トランプ前大統領のフロリダ州パームビーチ到着を歓迎する支持者たち=ウィリー・グワディオラさん提供

 「ウィー・ラブ・ユー(私たちは愛している)!」

 シュプレヒコールを上げる沿道の支持者たちの前を、トランプ前大統領の車列はゆっくりと通り過ぎる。大統領専用車の防弾ガラスの窓越しに、トランプ氏が拳を握りしめて力強くガッツポーズし、支持者たちを見つめて「サンキュー」と繰り返しつぶやく――。

(1月20日、出迎えた支持者たちにガッツポーズを取るトランプ前大統領の姿を映す動画=ウィリー・グワディオラさん提供)

 慈善団体代表のウィリー・グワディオラさん(63)は、自分のほんの10メートル弱の目の前で手を振るトランプ氏を見て、「歴史的な瞬間だ」と感無量の思いだった。

拡大トランプ前大統領の熱烈な支持者であるウィリー・グワディオラさん=2月4日、フロリダ州ウェスト・パームビーチ、筆者撮影
 退任日の1月20日、トランプ氏が降り立ったパームビーチ国際空港からトランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」までの沿道に、約1千人のトランプ支持者が「ありがとう 大統領」などと書かれたサインボードをもって立ち並び、トランプ氏のフロリダ到着を歓迎した。

 歓迎集会を企画したのが、熱烈なトランプ支持者であるグワディオラさんだ。一緒に沿道に並んでいた多くのトランプ支持者も感激して泣いていた。

 熱心なカトリック教徒であるグワディオラさんは、人工中絶反対を推し進めるため、オバマ元大統領の再選をきっかけに政治活動を開始した。2016年大統領選では当初、保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員を支援したが、同氏の撤退後はトランプ氏支援に切り替えた。トランプ氏の印象は「中絶賛成ではないが、中絶反対でもない境界線にいる感じ」だったという。

 しかし、トランプ氏が任期中に中絶支援の非政府組織(NGO)への連邦政府資金の援助を禁止したことなどを理由に、「最も中絶反対に熱心に取り組んだ大統領になった」と高く評価する。トランプ氏は次の2024年大統領選に出馬すると思うかと尋ねると、「当然だ」と力を込めた。

 パームビーチには、グワディオラさんのような熱心な支持者のほか、トランプ氏の就任前から良好な関係をもつ地元共和党の存在がある。

 パームビーチ郡共和党のマイケル・バーネット委員長によれば、マール・ア・ラーゴでは2013年以来、地元共和党が毎年、政治資金パーティーを開き、トランプ氏もたびたび参加。政治資金集めを手助けしてくれたという。「トランプ氏は大統領当時、とても忙しかったが、いまは地元の一人だ。今後も我々のパーティーに参加したり、地元選挙にも関わったりしてくれることを期待している」と語る。

 ただし、トランプ氏はツイッターなどソーシャルメディアから締め出され、これまでのように直接的に動向を知ることはできなくなった。地元共和党がマール・ア・ラーゴ側と唯一連絡を取り合っている相手は、パーティーなどを取り仕切るケータリング・マネジャーだという。バーネット氏のような地元共和党幹部にもトランプ氏の動向はなかなか漏れ伝わってこない。8日にマール・ア・ラーゴ近くの自身が経営するゴルフ場で目撃されたくらいだ。トランプ氏は地元の人々にとって雲の上の存在であることに気づかされる。

 ただ、バーネット氏は「トランプ氏は前大統領だ。我々は彼のプライバシーを尊重し、あまり負担をかけたくはない」とも語る。

 そのバーネット氏も、熱心なトランプ支持で知られる。

拡大パームビーチ郡共和党のマイケル・バーネット委員長=2月4日、筆者撮影

 米領プエルトリコで幼少期の「みじめな」(同氏)一時期を過ごした経験のある黒人のバーネット氏は、米国人としての誇りに強いこだわりがある。トランプ氏をなぜ支持し続けるのかと問うと、「保守系判事の指名、減税、雇用促進、不法移民対策を実現させたからだ」と答えたうえで、「日本人だって自分たちが日本人であることに誇りをもっているだろう? トランプ氏は我々に米国人の誇りを再び実感させてくれたのだ」と強調した。

 ただし、トランプ氏が2度目の弾劾裁判を受けることになった米連邦議会議事堂襲撃事件をめぐっては、与野党を問わず、トランプ氏の責任を問う声は強い。しかし、バーネット氏は「トランプ氏は平和的な集会を呼びかけただけ」と一蹴。弾劾訴追に同調した共和党議員を「トランプ氏を憎み、反撃の機会をうかがえっていた既得権益層(エスタブリッシュメント)の人々だ」と厳しく批判した。

 前述のグワディオラさんはさらに先鋭的な意見をもつ。襲撃事件をめぐる一部共和党内でのトランプ批判に強く憤り、「共和党にはもう飽き飽きしている。共和党を解散し、新たにトランプ氏を中心とした『愛国者党』を立ち上げるべきだ」と断言する。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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