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SNSが変えたミャンマー・クーデターへの抗議の民衆蜂起

時代のクリエイティブな抗議スタイルはどんな結末をもたらすのか

海野麻実 記者、映像ディレクター

 クーデターにより国軍が実権を掌握したミャンマーで、連日行われている大規模な抗議デモ。歴史的にも、ミャンマーでは1988年の「8888民主化運動」や2007年の「サフラン革命」など、独裁政権の打倒に向けて民主化を求めた市民が蜂起してきた経緯がある。

 しかし、インターネットが普及し、FacebookなどのSNSが急速に浸透したなかでの今回の大規模デモは、これまでとは一味違う様相を呈し始めている。

Jose_Matheus/shutterstock.com

VPN経由で写真・動画をSNSに投稿

 若者たちは、インターネットが遮断されても、VPN(仮想プライベートネットワーク)を経由して、Facebookに絶え間なく「ミャンマーを救え!」「アウンサンスーチーを解放せよ」「不服従運動」のハッシュタグを付けて投稿。クーデター直後の数日間は、国軍の動きも警戒して、自宅のアパートなどから鍋やフライパンを叩く「静かなる抗議活動」が呼びかけられていたものの、ここ数日は街頭に出て堂々と抗議活動を行う様子が、写真や動画を交えて次々にSNSに投稿されている。

 2月5日、初めて路上に出てデモ抗議に参加した様子をFacebookに投稿した、ヤンゴン在住の仏教徒の女性(27)はこう話す。

 「初めの数日は、コロナ禍ということも心配ですし、国軍が目を光らせているのではということが一番の恐怖でしたが、次第にその恐怖は無くなりました。SNS上で同じ年代の若者たちが次々に路上に出てプラカードを掲げて声を上げているのを見て、自分も家に閉じこもっている場合ではない、と飛び出したのです」

 軍は8日夜、クーデター後初めて、トップのミン・アウン・フライン司令官が国民に向けて演説を行い、軍の行動の正当性を主張。ヤンゴンや中部の主要都市マンダレーで5人以上の集会の禁止を命じ、抗議活動の押さえ込みを図ろうとしたものの、現時点でその効果は全くないようだ。

あっという間に拡散する警察官のデモ参加

 医療関係者や警察官、政府職員がデモ抗議に参加する様子も次々にSNSにアップされている。警察官ら数十人が制服姿で、「我々は市民の警察官だ」と書かれた横断幕を掲げて行進する映像や、デモ抗議に参加する市民が向けたスマートフォンのカメラに向けて、独裁への不服従を示す3本指を立てるポーズをこっそりと見せる警察官の写真などが、瞬く間にFacebookを中心としたSNS上で拡散されている。

 また、中部マグウェーでは2月9日、デモ抗議を行う大勢の市民らに警察が放水を行なっていた際、3人の警察官が市民と向かい合った隊列から突然飛び出て、持っていた盾をかざしながら市民を守るようにして放水車の前に立ちはだかった。その瞬間、市民からはどよめくような歓声が上がり、3人の警察官に対しても容赦なく浴びせられる放水から、彼らを守るような行動に出る大勢の市民らの姿を捉えた映像も、急速に広まっている。

 本来、デモ抗議の取り締まりに当たる任務を担わされている警察官が、次々に市民側のデモ抗議に参加する様子は、SNSに投稿されると、あっという間に賞賛のコメント共に拡散され、それがさらに民衆のデモ抗議の勢いを加速させているように見える。

「コスプレ」をして国軍に抗議

 若者らしく「コスプレ」をしてデモ抗議に繰り出す光景も増えている。

 スパイダーマンの着ぐるみを着て、「#SAVE MYANMAR(ミャンマーを救え) 」「軍隊を拒否せよ」「ミャンマーに正義を!」とマジックで書き込んだ大きな段ボール紙を掲げて歩く者。結婚式がクーデターにより延期になったカップルらがウエディングドレスやタキシードを着たまま練り歩き、「未来の私たちのベビーに独裁はいらない!!」「私たちは結婚式の延期を受け入れることはできます。でもこのクーデターのためにではありません!」と抗議する様子。

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